●『二人で共に』
クリスマスイルミネーションが進む道にずっと広がっている、とある公園広場。 電飾に彩られた木々が、キラキラと宝石のように綺麗だった。 ちらちらと降り始めた小雪が一層のクリスマスムードを盛り上げている。 「一緒に……行きたいところがあるんです」 そう、僅かに照れを見せつつ若菜を誘った一成は、彼女をリードするかのように静かに若菜の手を取った。そんな彼は若菜から貰ったクリスマスプレゼントのマフラーを首に巻いている。 手が触れた瞬間から、じわりと伝わるのは互いの体温だった。それを妙に意識してしまい、二人とも胸のうちの鼓動が早くなった。 互いの唇が触れ合ったのは、遠くない過去。初めての二人のクリスマスを迎えて、プレゼント交換をして、そして一成から若菜に不意打ちのように口付けた。夢のようでありながら、ぬくもりは未だに消えずに残る、現実だった。 それが影響しているのか、若菜も僅かに頬がピンク色に染まっている。 二人が恋人同士になって、ほぼ半年。 一成が若菜に一目ぼれをし、その思いを告げた。 若菜はその身長の高さゆえそれを気に病むあまりに、恋愛を殆ど諦めていた。だから一成が告白してくれた時は、本当に嬉しく思えた。 約二十センチほどの身長差のある二人であるが、互いを想いあう気持ちはそれを拭えるほどのものだった。 ただ、年下である事と自分のほうが背が低い事に関しては、一成が僅かに後ろめたさを内心に潜ませているようだが。 「あの、ここも……綺麗ですね」 ぽつり、と若菜がそう告げる。 イルミネーションに彩られた木々を見つめながらの言葉に、一成がつられるようにして彼女を見上げた。 優しい光を受けている彼女は、他の誰よりも美しい思う。そんな若菜の横顔を見つつ、一成は次の言葉を繋げるために口を開いた。 「これから行くところは……もっと綺麗ですよ。きっと……」 きゅ、と握る手に小さな力を加えながらの、響き。 この道の先には、もっと光り輝く場所があるらしい。 (「一成さん、どこへ連れて行ってくださるのでしょう……?」) 若菜が内心でそう呟く。彼女には行き先が見当も付かないらしく、ただ、一成に手を引かれるままにゆるりと歩みを進める。 途切れることのない、キラキラとした世界。 周りに人影も少なく、まるで自分たちだけのために用意されたかのような空間。それは、二人を祝福してくれているかのようだと若菜は思った。 この先に何があるのかはわからない。だが、大好きな人と歩む道に、ひとかけらの不安も無い。そこにあるのは、幸せな気持ちと期待のみだ。 静かに降り続ける雪。 きらめく木々に囲まれた小道は、一成と若菜を見守るようにして、そこから先しばらくも続くのだった。
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