●『聖なる夜に…二人』
「初めての二人でのクリスマスだね」 「そうだね いい日にしようね」 七海が横を歩く遙を見上げて、にこっと笑いかけると、遙も七海の目を見て、柔らかく微笑む。 凛と張りつめた冬の夜の空気。夜空には、宝石を散りばめたような星が無数に煌き、自然の作り出す美しいイルミネーションが広がる。 「綺麗だね」 「そうだね」 その夜空を見ながら、遙が白い息を纏わせながら呟くと、同じ方角を見上げながら、七海も柔らかく微笑んだ。 聖なる夜に幸せな二人。凛と張りつめた冷たい空気の中、二人の周りは暖かくて穏やかな空気が流れて。 言葉は少なくても、ただ傍にいる幸せ。一緒に同じ物を見て、一緒に美しいと感じる事のできる幸せ。 「メリークリスマス」 照れくさそうに、若干頬を染めて、遙がプレゼントを取り出して七海に渡す。 プレゼントを受け取った七海が、嬉しそうに目を細めて、その梱包を解くと、中からは、今日のリボンと同じ水色のマフラー。 「貸して」 遙が、そのマフラーを七海に巻いてあげると、 「ありがとう」 とても嬉しそうに、少し照れたように、七海が頬をほんのり染めながら微笑んだ。 普段は銀色の髪に映える、黒い服に黒いリボンが多い七海だが、今日は遙と過ごす初めてのクリスマス。いつもつけない水色のリボンをつけて、白いコートを着ている。 今日の服装を遙には教えていなかったのに、まるで今日の服装を知っていたかのように、見事にマッチするマフラー。 偶然かもしれないが、そんな偶然が凄く嬉しくて。 七海が、ふと見上げると、 「あ……雪だ」 ふわふわと、優しく雪が降り出していた。 「そうだね」 天然のイルミネーションに柔らかく降る雪、そして銀の髪に白いコート、水色のリボンとマフラーの愛しい彼女は、まるで雪の妖精のよう。 遙は、その妖精をそっと抱き寄せる。 「遙くんと一緒だとあったかいや」 言いながら、七海は遙の腕に自分の腕を絡めて寄り添った。 「俺も七海と一緒だとあったかいよ」 にこりと柔らかく微笑む遙。 寄り添って二人で美しい夜景を、同じ様に美しいと思える幸せ。 「好きだよ」 唐突に七海の口から漏れた響きは、遙を最高に幸せな気分にしてくれて。 「俺も好きだよ」
――この雪が融けても、愛しい雪の妖精はずっと傍にいてくれな。
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