かつて少年少女には、「1999年」という名の不安が存在した。 1980年代後半に一大ムーブメントを巻き起こし、様々なメディアで紹介された、「1999年に地球が滅ぶ」という終末思想。 それは、大人達にとっては単なる議論と娯楽のタネに過ぎなかったが、純粋な少年少女の中には心から終末思想を信じる者も多く、後に様々な社会問題の原因となった。
1980年代後半、ヨンロク号の近所にある第23号棟の住人にも、こうした終末の不安に駆られた少女達が存在した。 ささやかな幸せの日々の中でも拭う事のできない、将来に対する漠然とした不安と、自分が特別な存在だという夢想。彼女達のこうした純粋な気持ちに終末思想が忍び寄った時、夢想は肥大し、変異し、そして悲劇が始まったのであった……。
「前世でディラ、セルシオン、ノーマとして使命の為戦っていた方、60円切手同封のお手紙をください。こちらはルミナス、吼、シオンです」 そんな投稿がオカルト雑誌の読者コーナーに掲載されてから数ヶ月。23号棟の一室に、6人の少女達が集っていた。雑誌投稿がきっかけで集まった彼女達は、ここで小さなサークル活動を始めていたのだ。 活動内容は「前世戦士として、1999年に地球を襲う魔王アンゴルモアを倒す事」。 もし彼女達が能力者であったならば、この活動にも何らかの真実や意味が含まれていたかもしれない。しかし彼女達は、幸せな暮らしを約束された一般人であった。彼女達の不安と叶わぬ超人幻想は、完全な狂気と化して、彼女達自身の心を支配していたのだ。
「……みんな、準備はいい?」 1人の少女の問いかけに、他の少女達も静かに頷き、刃物をしっかりとその手に握り直す。 部屋中に置かれた姿見に映る少女達は、これから自分達が行う儀式の重要性と危険性を認識し、いずれも緊張に満ちている。
「聖賢者トリスメギストスの導きの元……わ、私達は肉を脱ぎ捨て、ぜ、前世の力を取り戻す!」 「あ、新たな次元に覚醒し、魔王を倒す。もうそれしか、この、世界を、救う、方法は、無いの!」 病的に、あるいは狂的にそう叫ぶと、少女達は刃物を振り上げ、お互いの身体に突き立てる。室内は見る見る鮮血に染まり……。
そして、現在。閉鎖された23号棟、通称「呪いの団地」前に、能力者達は集合するのだった。
シナリオタイプ | :サブシナリオ |
公開日 | :2007年04月06日 |
総制覇数 | :32844 |
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