工場群の隙間を縫うように秩父の山道を登り、橋を渡ると、一つの廃校が見えて来る。 青々と草の生い茂るグラウンドの向こうにあるのは、木造2階建ての校舎だ。 ガラス窓はひび割れ、屋根や壁にも大きなヘコみや傷が入っている。 錠前で厳重に閉ざされた校門の門柱にあるプレートには、金色の文字が今も輝いていた。
『津ヶ森小中学校』
それが、この廃校の名だ。 かつては周辺から通って来る生徒達の声に溢れていたというこの学校。 だが、最も多くの従業員を抱えていた鉱山の閉鎖に伴って、次第に生徒数は減少し……およそ20年前の3月、最後の卒業式を終えると共に、この学校は廃校となった。 その後再開発の流れからも取り残され、校舎は時と共に緩やかに朽ち果てつつある。
この学校に生徒達が通っていた頃、彼等の間に流れる噂のうちに、大人達からすれば荒唐無稽としか思えないようなものがあった。曰く、この学園には『祟り神様』がいる、と。
普段、何気なく聞いているチャイムの音。 そのチャイムの音が、突然奇怪な音色に変わったならば、あなたはその音が鳴り止まぬうちに学校から急いで出なければならない。 何故ならその奇怪な音色は、この山に棲む『祟り神様』が若い魂を求めている証だからだ。 もし、その音が鳴り止むまでに学校から出なければ……その人は、祟り神様への捧げ物として、魂を持ち去られしまうだろう。
勿論、噂を本気で信じている者など多くは無かっただろう。 しかし、この学校が廃校となるその時まで、その噂が奇妙な真実味を持って語られ続けたのもまた事実だった。
そして、現在。 誰も居ない廃墟と化したはずの学園から、まるで往時に戻ったかの様にチャイムの音が響いているとの噂が流れていた。 普通なら、機械の故障で片付けてしまいそうなこの事件。 だが、そこにはこの廃校に棲み付いたゴースト達の存在が見え隠れする。 慎重に校舎へ踏み入る能力者達を歓迎するかのように、チャイムの音が響き渡る――。
シナリオタイプ | :メインシナリオ |
公開日 | :2007年05月21日 |
総制覇数 | :43844 |
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