静岡県の東側、駿河湾を望む街に、一つの大型病院の廃墟がある。 既に朽ちた病院の看板には、かつて『南十字病院』の名が書かれていた。
規模と交通の便を兼ね備えたこの病院は、長年に渡って地域の医療を支えていた。 周辺には他の大型医療機関もなく、数多くの病室とベッドを持ったこの病院では、医師や看護士達が、激務に追われながらも自らの務めを果たしていたのである。
そして病院を支えたのが、院長の掲げた方針であった。 いかなる患者も、決して見捨てない。 その崇高な精神を実現するため、院長は考えられる限りの手を尽くした。
時には移植用臓器の不足から命を失おうとする患者のため、海外から臓器を購入し、あるいは国内未認可の薬品を用いて難病に苦しむ患者を治療する。 さらには多重債務を抱えた患者を生き延びさせるため、臓器を買い取って夜逃げのための資金を作るなど、彼らはまさしく、患者のためにありとあらゆる手を尽くしたのだ。
だからこそ、この病院に司法の手が伸びるのも当然だった。 医の倫理が厳しく問われ、院長をはじめ、事件に関わった医師達は医師免許を剥奪される。 そして病院は、医療機関としての運営を完全に停止されたのだ。 この病院の閉鎖を惜しみ、診療再開を望む声は一部で起こったが、近くに別の総合病院が出来たことでそれも途絶え……この病院は、忘れられた廃墟と化した。
そして現在。能力者達は廃墟と化した病院を包む、禍々しいまでの残留思念の気配を感じ取る。 生と死が交差する病院という場所が、残留思念を呼び込んだのか。 誰もいない病棟の中に、能力者達の足音が響く……。
シナリオタイプ | :メインシナリオ |
公開日 | :2008年06月26日 |
総制覇数 | :64184 |
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