処刑人
〜長崎県某所〜

「もうすぐ12時8分……新月の時間ね」
「僕達が持ってる『黄金の林檎』の欠片は、元々持っていた2個に、銀誓館学園から貰った4個を足して、6個。黄金の林檎は全8個の欠片のどれかの元に復活するから、僕達の元に林檎が来る確率は、はちぶんのろくで、え〜っと……」
「……75%。……ロイ、……馬鹿」
「ひどい、アリシア言い過ぎ!」

「静かに! 始まるわ」
 オルテンシアの号令で、処刑人達は一斉に欠片に注目する。
 新月の時刻になったとたん、欠片はまぶしい光を放ち、そして……。

 処刑人達の元に、まばゆく光る『黄金の林檎』が復活した!
「おおおおおおおおおお…………!」
「我らが宿願、遂に!」
「やったぁ〜っ、やった、やったよアリシア」
「……苦しい、……馬鹿!」

 仮面を付けたまま喜び合う少年少女達。さしものオルテンシアも、林檎探索隊の重圧から解放され、へなへなと膝を付く。そして、何とか気持ちを取り直し、指示を下す。
「ただちに輸送の手配を。吸血鬼どもに気付かれる前に、本国まで運びましょう」

「とりあえずは良かったんじゃないの? これで、吸血鬼の処刑も進められるってもんだ」
 金枝のザッカリスはそう呟き、皆の熱狂から離れてプレッツェルを囓る。
「これは銀誓館に受けた『恩』だ。さて、どう返すべきか……」
 ザッカリスは少しの間だけ空を見上げ……。
 そして仲間達と共に、本来の任務であるアリスの処刑に向け、行動を始めるのだった。