夜の闇が広がる森の中、たき火を取り囲む3人の男女が居た。たき火には鍋がかけられ、肉と香草が入ったシチューが作られている最中だ。3人の男女は犬の尻尾を生やし、眼鏡をかけたストライダーの狂戦士サキと、顔は美しいが血色の悪さがそれにマイナス要素を加えているエルフの邪竜導士ルドルフ、無精ひげを生やし鍛え抜かれれた筋肉を持つヒトの重騎士ラインハルト。 今3人はサキが宝地図屋から買ってきた地図を木に貼り付け、これからの旅のルートを検討している最中だったが……。この地図が曲者だった。どう贔屓目に見ても子供の落書き程度のアバウトさ。書かれているのは宝があるであろう場所に×印と、湖であろう空白地帯、そして海岸線、一応落書きでなく地図である事を示す方位図。 サキが付けている伊達眼鏡を拭き見直してもその事実は変わらない。 「だから、今私たちが居るのはココ。湖がこっちにあるという事は宝のありかまでは歩いて5日ってところね」 もっともらしく、サキが地図を指差し自分たちの位置と宝のありかとを見比べて予測を語るが、それに噛み付く男が1人。ルドルフだ。 「ちょっと待て、サキ。その地図に信憑性はあるのか?どう見ても子供の落書きだぞ。それにその予測だが、俺たちの場所は本当にそこか?それ以前にその地図の縮尺はいったいいくつだ?」 地図の内容が不明瞭すぎてサキの発言に根拠が無いと、そう噛み付くルドルフ。自分が購入してきた手前、地図に誤りがあるとは認められないサキ。お互いに譲れない戦いだ。しかし、そんな2人を見ているだけの人物が1人居る。口論に参加していないラインハルトは、煮詰まってきて既になんの肉だったかわからない鍋の中身を焦げ付かないようにかき混ぜながら2人のやり取りを面白そうに見ている。時折顔をしかめるのは、肉の生臭さを消すために入れた香草の臭いが鼻にくるらしい。 サキとルドルフの2人がそろうと何時も口論に発展する。そして、そんな2人を見るのがラインハルトは大好きだが、このまま放置しておけば夕食は進まず、明日の進路も決定しないまま深夜になってしまう。 「お前ら、いい加減にしないとシチューが煮詰まっちだろう」 流石に見ているだけというには時間が経ち過ぎている。ようやくラインハルトが口をはさめば、返って来たのはルドルフの反論だった。 「だったら、ラインハルトはこんな地図を頼りに行動しようってのかい?」 「俺は前の村で北西に湖があるという話を聞いた。で、俺たちは村から真っ直ぐ北に向って来た。ならここから西か北西にかけてその湖を探してみればいいだろう」 そうすれば、その地図の信憑性も証明されるということらしい。どうやら、村から湖までの大体の日数まで聞いているという事だから、湖さえ見つかれば無事に宝にありつける可能性が出てきたようだ。なんだかんだやりつつも、3人揃っていれば何とかなるものだ。
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