夜氷天
お題ショートストーリー(2009/07/17執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:夜氷天
【得票数:17】

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プレイング
 常夜灯と正面に見えるビルの明かりだけが構内を照らし、自分達の足音すらも闇の奥に吸い込まれる錯覚さえ誘う。
 深夜、りんかい線国際展示場駅。
 日中は多くの人が行き交うこの場所も、終電の後ともなれば、迎える客人はただ深夜の静寂のみ。そして、その静寂を破る者があるとすれば――

「甘い……」
 突然に閃いたドス黒い腕を阻み、スラッシュギターが歪な音を立てた。
 サングラスの奥で眉一つ動かさず呟いた澤村・鉄平(bn0111)の背後から一枚の符が飛来し、ゴーストの体を地べたに這いつくばらせる。導眠符の効果に満足げに微笑んだ金森・あかね(bn0003)の横顔を照らすのは、揚羽・夏希(bn0001)の生み出したフレイムキャノンの光。
「ナイスだ、鉄平、あかね! そぉら、気持ちよぉぉく燃え上がりな!」
 火球は上空から飛来したゴーストに直撃し、少女のようなその顔を苦悶の表情へと変える。
 けれど敵も、ただやられるのを待っている筈は無い。
 地に落ちた衝撃からか、眠りから逃れたゴーストが動いたのを皮切りに、三体の異形は我先にと反撃に転じた。
 眠らされた恨みとでも言わんばかりに襲い来る手に、鉄平の上着が裂け、夏希の肌に血が滲む。そしてあかねにも、毒に塗れた腕が振り上げられ――
「あっ……」
 逃れられないと瞳を固く閉じた、その時。響いたギターの旋律がやがて衝撃となり、蛾にも似た羽を戦慄かせる。次の瞬間に倒れ込んだのは、不運なゴーストの方。
「ありがとう、鉄平さん! よーしっ」
 ショッキングビートに自由を再び奪われたゴーストへと、禍々しき呪いの力を秘めた符が飛ぶ。あかねが狙い違わず放ったそれは、今度こそその偽りの命を刈り取った。
 ひゅうと口笛を鳴らし、夏希も向き直る。急速度で降下してくる敵の姿は瞬く間に視界を埋め尽くすが、それでも彼女の笑みを消すことは叶わない。
「今度はもっと熱いのをお見舞いしてやるぜ!」
 避けも退きもしない。カウンターとばかりに殴り返した腕は、さながら天に舞い上がる不死鳥。悲鳴を上げたゴーストへ、更に鉄平が渾身の力でギターを叩きつければ、炎にまかれた姿はやがて闇へと溶けてゆく。
 不利を悟ったのだろう。残った一体が無人の構内へと逃げ込もうとするも、3人はそれを許さない。
「逃げ場など無い」
「夏希さん、お願い!」
 鉄平が立ち塞がり、あかねの符が飛ぶ。瞬く間に傷の癒えた夏希の手には、爛々と光を放つ炎の弾。
「あばよ、燃え尽きなっ!」
 渾身の力で放たれた炎は一瞬でゴーストを包み、その光が消えた後には灰の一片さえも残しはしなかった。

 再び訪れた静寂。
 それを破ったのはゴーストの魔手ではなく、人の明るい笑い声。
「やったね!」
「あぁ」
「愛してるぞ、お前達!」
 やがて夜が明ければ、また何事も無かったかのように、此処は人で溢れるのだろう。それまでの束の間の時、少年少女たちは自らの手で取り戻した平和を喜び合うのだった。
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