青い髪が舞った。 それと同時にドラゴンの巨体が倒れる。 しかし、タトゥーインはそれで動きを止めたりはしない。ドラゴンを倒した両手の剣を構え直すと、すぐに次のドラゴンへと向かう。 いや、彼の狙いはドラゴンではない。その向こう、ドラゴンよりもさらに巨大な、もはや生物の域を越えた山のような巨体と、神すらも越える力を持つドラゴンロード・ヴァラケウス、それを倒すことこそが狙いだった。 タトゥーインの行く手を阻もうとドラゴンたちが動いた。 一体がタトゥーインの進路上に身を滑り込ませて大きな口を開く。それはブレスを放つためのものだが、タトゥーインは止まらない。 いくらドラゴンウォリアーになっているとはいえ、ドラゴンのブレスを正面から受けては無傷ではいられないだろう。場合によっては致命傷を負うかもしれない。 それでも、変わらぬ速度でドラゴンへと突っ込む姿は無謀と思えた。 しかし、放たれたブレスがタトゥーインを襲うと見えた瞬間、虹色の髪をなびかせてオリヒメが彼の前に出た。 「任せてください」 「頼む」 交わす言葉は短いが、そこに籠もった信頼は絶大だ。 二人は冒険者になった頃、同じ旅団で知り合った。冒険を重ね、今ではお互いの力量や人柄を深く信頼している。 オリヒメはタトゥーインなら安心して背中を預けられると思っているし、タトゥーインはオリヒメの護りの力を頼もしく思っている。 普段はオリヒメを女性として庇うこともあるタトゥーインだが、戦場ではともに戦う冒険者。今はオリヒメがドラゴンの攻撃を防いでくれることを信じ、その後に訪れる攻撃の機会を逃さないよう備えた。 タトゥーインの前に出たオリヒメはすでに鎧聖降臨で防御を固めているが、ブレスを受け止めるために大きな盾を構える。 ドラゴンのブレスが盾に直撃すると、その威力に圧されてオリヒメはわずかに後退したが決して崩れたりはしない。見事にブレスを防ぎきり、隙ができたドラゴンにタトゥーインが必殺の二刀を繰り出した。 タトゥーインがドラゴンを追い詰める背後では、オリヒメが周囲のドラゴンを牽制する。 「大岩斬!」 オリヒメの声が響くとともに衝撃波が飛び、タトゥーインを攻撃しようとしていたドラゴンの気を逸らす。 そして、その間にタトゥーインがまた一体のドラゴンを倒した。 ドラゴンはまだ数多く存在するが、タトゥーインとオリヒメの視線はヴァラケウスを捉えて揺るがない。 「俺の剣は、貴様達のような邪悪を斬るためにある!」 そう叫んでタトゥーインが再びヴァラケウスへと飛ぶ。 その瞳はセイレーンの青ではなく、魂の色を映して赤く輝き、その口元には不敵な笑みを浮かべていた。
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