雅姫
お題ショートストーリー(2010/03/05執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:雅姫
【得票数:10】

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プレイング
 囲まれる、と考えた時には既に囲まれていた。
 近藤・史檻は、手遅れになるまで気付けなかった自分自身に舌を打ち、苦無を構えた。
「チッ……囲まれたか」
 そんな史檻の背中にとん、と軽い衝撃が加わる。微かな体温に史檻は肩口に振り返った。
「随分と盛大な歓迎だね。でも、そのくらいの方が、腕が鳴るってものだよ」
 史檻と背中を合わせた橘・立花が、陽気な声で言った。
 事態を楽観視しているのではない。逃げることは叶わないと悟ったのだ。闘志を宿した目がそれを語っている。
 立花はトンファーを構え、史檻の答えが返るよりも早く地を蹴った。
 ゴーストの攻撃を素早く体を沈めて交わし、力強く踏みしめる膝の力を利用して体勢を立て直す。
 一体目、と立花が呟きトンファーの柄を強く握り締めた瞬間。視界の横に移った影に、立花は慌ててトンファーを突き出した。
「って、わっ!」
 予期せぬ位置からの強烈な攻撃。体勢を崩しながらトンファーで弾くよう防ぐが、攻撃は間髪入れず襲い掛かる。完全に攻撃の機会を失ってしまった防戦一方の状況。
 しかし、転機は思う以上に早く訪れた。
 ゴーストの動きが止まったのだ。立花はトンファーを掲げた。
「史檻くん、ナーイス!」
 ゴーストから距離を取る立花の声に応えるよう、八卦迷宮陣を放った史檻がゴーストに向かって水刃手裏剣を投げる。受けたゴーストが絹を裂くような、声を上げた。
「橘、いくぞ」
「ラジャッ!」
 駆け出した史檻を、八卦迷宮陣を逃れたゴーストが襲い掛かる。
 鋭い両腕の爪が史檻の体を大きく斬りつけた。その刹那、もう片方の腕が腹部を大きく貫く。
 立花は足を止めなかった。敵の密集している場所へと駆け出し、ニッと口角を引き上げる。
「遊んであげるよ」
 逃げることも攻撃することも許されぬゴースト達が、立花の放った龍撃砲によって屠られる。
 断末魔の悲鳴。その悲鳴に史檻の体を貫くゴーストが反応した。
「残念だったな」
 その隙を史檻は逃さなかった。貫かれた霧影分身術による分身が霧散するが早いか、ゴーストの懐へと体内の水分を練り上げ、死角から滑り込む。
「――食らえ!」
 冷徹な声と同時に叩き込まれた爆水掌によって、ゴーストは声を上げる間もなく消滅した。史檻の瞳が次の敵を睨む。
「生きて帰るぞ、橘!」
 史檻の声に、立花は力強く頷くことで答えた。
「青龍拳士の真髄を思い知れ!」
 戦場に、立花の声が轟く。
 どちらともなく駆け出した二人は攻撃の手を休めなかった。生きて帰るため、さながら鬼神の如く敵を屠って行った。
 ――どれくらい戦っていたのか。気付けば最後の一体が消滅して行った。
「……生きてる?」
 地面に傷だらけの体を横たえ、大の字に寝転びながら立花が問う。
「生きている」
 血の混じった滴る汗を拭い、直ぐ傍で腰を下ろす史檻が答えた。
 数秒の沈黙。二人は顔を見合わせ、笑いながら拳を合わせた。
 今この瞬間を噛み締めるように。
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