鴉胡蝶
お題ショートストーリー(2010/04/17執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:鴉胡蝶
【得票数:8】

お題イラストを拡大する
プレイング
 この日エリザベスが偶然見つけたダンジョンは、いかにも! な雰囲気の遺跡だった。
「ここ、腕試しにいいかも!」
「そうだな。だが、手に負えないと感じたらすぐに引き返すぞ」
 前を歩くエリザベスが、名案、とばかりに声を上げれば、後ろを歩くクレスが溜息を零す。
「クレスはいつもそればっか。あたしなら大丈夫って、きゃっ!」
 そんなクレスへエリザベスが反論と共に振り返ろうとするも、全てを言い終える前に言葉は途切れる。
 どうやら長くに苔に覆われた石畳は滑りやすくなっているらしい。エリザベスは見事に足を取られ、がくん、とバランスを崩すも。
「っと、誰が大丈夫だって?」
 少女の体が後ろへ倒れる前に差し伸べられた手は、身を乗り出したクレスのもの。
 エリザベスが痛みを感じるよりも先に、軽く前へと引かれた彼女の体がクレスに抱き止められる。
「で、でも、さっきのあたしの鞭さばき、良かったでしょ?」
 その体勢のまま相手を見上げてエリザベスが弁明をするも、青年は先程よりも深い溜息を零すだけで。
「今の盛大な転び方も凄かったがな」
「う……、っていつまでどこ触ってるのよバカ! ハレンチ! 石頭!」
 続くクレスの言葉にエリザベスは言葉を詰まらせると、どん、と相手の胸を突き飛ばし、駆け出して。
 去り際の悪態の連続にクレスは肩をすくめると、少女を追いかけるべく歩き出し――

 ――鼓膜を破るような、けたたましい咆哮を聞いた。

「エリザベス……っ!」
 歩みはすぐに駆け足へと変わり、少女の背後へと追いつけば、止まる。
「なにあれ!?」
 エリザベスの声につられるようクレスが見上げた先には、鋭く尖った牙と禍々しい翼を持つ獣『ランドホエール』の姿があった。
 首が痛くなるほどに見上げなければ全身がわからない程の巨体。それを覆い守る皮膚は瓦礫のように厚く、ひび割れている。
 見上げた先の石壁にランドホエールが前足をかけると、猛禽類のような鉤爪が赤黒く変色しているのが見えた。
 巨体の体重を身に受けた壁に亀裂が走り、砂埃が舞う。
「俺達で倒せるのか……?」
 クレスがぽつりと呟くと、エリザベスが前を見据えて鞭を構える。
「た、倒せるわよ。クレスとあたしなら、ずっと一緒だったんだから!」
 エリザベスが微かに震える声で、けして根拠にはならない理由を告げるも。
 ランドホエールがこちらへと視線を向ければ、少女はびくりと肩を揺らす。
 クレスはそんな彼女の隣へ一歩踏み出せば、睨みつけてくる巨獣へと剣を構えた。
 二度目の咆哮が空気を震わし、びりびりと痺れるような緊張が青年の体を走る。
「そうだな。きっと大丈夫、だろう」
 クレスが言葉を返せば、エリザベスが瞳を瞬かせるも、鞭を握り直して。
「もちろん。足引っ張らないでよね、クレス」
「なら転ぶなよ、エリザベス」
「もう、くどいわよ!」
 他愛のないやりとりを交わし目配せをした二人は、とん、と地を蹴った。
※人気投票をする場合は、投票するキャラクターでログインしてください。