「ふふふんっ。この雰囲気、最高だね!」 晴れ渡った青空を背に、眼前で広がる古代遺跡。そのトレジャーハンター心をくすぐる佇まいに目を輝かせながら、エルフの紋章術士・アルカナは楽しげに声を弾ませる。 「何だか、すっごいお宝がありそうな予感!」 「慌てるな。別にお宝は足生やして逃げないぞ」 今にも飛び出していきそうなアルカナに、横から釘を刺したのはヒトの武人・イオシスだ。 「この遺跡にグドンがいることは間違いないんだ。ちゃんと考えて行動しないと」 自分達はまだまだ駆け出しの冒険者。グドン相手といえども下手をすれば痛い目をみることになる。そう思っての発言だったのだが、 「もぅっ! 本当にイオシスは心配性なんだから!」 そんなイオシスの態度がお気に召さないらしく、邪魔くさいとばかりに手にした杖をブンブンと振るうと、 「そんなに不安ならボクがちょっと見てくるから、イオシスはそこで待っててよ!」 「あ、おい待て!」 イオシスの制止もどこ吹く風。アルカナは射られた矢の勢いで、遺跡の方へと駆けて行ってしまう。あっという間に小さくなっていく後ろ姿を見送って、溜め息をつくイオシス。まぁ、すぐに戻ってくるだろう。案ずるより産むが易し、を地でいく彼女にはよくあることだ。
やがて彼の予想通り、アルカナは何事もなく戻ってくる。満面の笑顔を浮かべて、ひどくご満悦の様子だ。 「はいっ! アルカナ、ただ今偵察任務を終えて帰還しました!」 「ご苦労。だけど偵察に行けなんて、一言も俺は口にしてないぞ」 「う……っ」 「だいたい、お前はいつもそうやって一人で先に――」 「分かった、分かったよ! ボクが悪かったです! もうしません!」 このまま説教が始まると長くなるのはアルカナも承知のこと。そうなる前にとりあえず謝ってしまうと、 「それより、今は取れたての情報の方が大事だって! 情報は鮮度が命だよ!」 しかめっ面のイオシスを無理矢理本題へと引き込んでしまう。 「ボク、グドンがどこにどれだけいるかも、ちゃーんと見てきたんだからさ!」 「まったく、これっぽっちも分かってないくせに……」 まるで反省していないアルカナを前に思わず今日二度目のため息がこぼれたが、確かに情報は新しいものに限る。そう自分に言い聞かせて心を切り替え、 「よし、じゃあその新鮮な情報とやらを聞かせてもらおうか」 「そうこなくっちゃ!」 乗り気になったイオシスに、嬉々として自分が見てきたことを話すアルカナ。その情報を元に、さっきまでとは打って変わって息の合う意見を交わしながら、二人は戦略を立てていくのだった。
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