鴉胡蝶
お題ショートストーリー(2010/09/04執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:鴉胡蝶
【得票数:14】

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プレイング
 棚に所狭しと並べられるのは、持ち主を静かに待つ武具の類。
 窓から差す午後の柔らかな光が、店内に舞う埃と、活躍を今かと期待する彼等を淡く照らす。
 何処か古びたような匂いは薬草のせいか、もしかしたら魔術書のせいなのか。
 そんな静かな店のカウンターに頬杖をついて座っていたダイアナは、ふと顔を上げた。

 カラン、カラン。

 静寂の中鳴り響いたのは来客――ダイアナの旅団仲間であるアシュレイとティモシーの訪れを知らせる鐘の音。
 カウンターに座る自分に気付かないのか、棚のものか気になるのか。きょろきょろと店内を見回す二人の姿に、ダイアナは再び頬杖をつく。
「いらっしゃい。お探しの物は星霊バルカンの炎にも溶けないペアリングかしら?」
 悪戯な彼女の声を聞いた青年と少女は、どちらからともなく、「誰がこんな奴と!」と叫んだ。

「ダイアナのお店には、相変わらず色々なものがあるのね」
「あら、お褒めに預かり光栄よ」
 棚にあるものを出したり戻したりしながらティモシーが呟くと、店主のダイアナは嬉しげに答える。
 そんな彼女に、少女は思いついたかのように手を叩くと、武器飾りを選ぶのに使う籠を手に取った。
「私の杖に似合いつつ実践に役立つような可愛い飾りものとか、ない?」
「そうね。杖をメイスに変えても良いのなら、天辺につけられそうなものはたくさんあるけれど」
「もう、ダイアナの意地悪ーっ」
 殴るのはちょっとな、なんて言いながらも上機嫌で飾りを選ぶ少女の隣では、一振りの剣をじっと見るアシュレイの姿。
「なあ、ダイアナ。これちょっと触ってみてもいいか?」
 いつになく真剣な青年の声に視線を向けたダイアナは、自分が答える前に既に素振りの構えを取っていた相手に苦笑を零した。
「仕方ないわねぇ、女の子のように優しく扱って頂戴?」
「また妙な例えだな」
 ダイアナの言葉にそんなことを返しながら、アシュレイは数度その剣を試し振る。
 刃が空を切り裂く音に思わず視線を寄せたティモシーは「似合ってる似合ってる!」と、楽しげに手を叩いて見せた。
 その声を聞いたアシュレイは一度心を決めたかのように力強く頷くも――思い出したのは本日のお財布事情。
 ちらりと盗み見た剣の値段は、どうやら財布を空にすれば足りるもので……要はギリギリのお値段だった。
「…………よし、買った、って――ぉわ!」
 暫く剣と見つめあい悩んだ末に声を上げたアシュレイに、呼応するかのように、突然剣から炎が立ち上がる。
 パチリ、と火花を挙げた様子はまるで喜びを示すかのような、紅蓮の色。
「ふふ。じゃあ、少しだけサービスしてあげるわよ」
 一人と一振り。その様子を見ていたダイアナはくすりと笑ってそう告げると、ゆっくりと立ち上がった。

 穏やかな休日、安らかな日々。
 それは冒険者達の一時の休息――そしてきっと、ずっと護りたい、しあわせの時間。
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