カランカランと心地の良いベルの音が鳴り響く。 扉を開けて入ってきた顔見知りに、店のカウンターに座っていたアイスレイピアの魔曲使い・ダイアナは口許を綻ばせた。 「いらっしゃい」 「こんにちは、ダイアナ」 「こんにちはー」 その理由は簡単、剣の魔法剣士・アシュレイとその友人である杖の星霊術士・ティモシーが旅団仲間である自分の店に訪れたからだ。 「相変わらずこの店は品揃えがいいな」 アシュレイはふらふらと店を歩き出した。 「ホントホント。あ、これ可愛い〜」 ティモシーは武器飾りの籠からいくつもの装飾を出して自分の杖に合わせながら楽しんでいる。 ダイアナはそれを微笑ましく見つめた。買う気がなくとも、こうやって店に訪れてくれるだけで、彼女にとっては嬉しいことだから。 「これ……」 色々な剣を見ているうちに、アシュレイの目にとまった一振りがあった。 くるりと振り返った彼に、ダイアナはきょとんとした目を向ける。 「なあ、ダイアナ。これちょっと触ってみてもいいか?」 ダイアナが了承の言葉を出す前に、彼は既にその一振りを握っていた。 そして、それは上段の構えを取られている。この店の中で素振りをする気満々のアシュレイに、ダイアナも苦笑するばかりだ。 「仕方ないわねぇ」 その言葉を聞き、アシュレイはブンッと素振りを始めた。 装飾品を探していたティモシーもその姿を見つめる。 グッと手に馴染む柄。振るたびに煌く、刃から吹き出る炎の残影。軽すぎず、重過ぎぬ重量。 アシュレイは素振りをしているうちに目を輝かせた。 「似合ってる似合ってる!」 ティモシーもそんなアシュレイの姿にパチパチと手を打って応えた。 事実、確かに似合っているとダイアナも思っている。しかし、彼が気軽に買えるほど安価なものではなかった気がする。 アシュレイは目をキリッと吊り上げ、その剣を持ってダイアナの前まで歩む。 ドンッとカウンターにそれを置き、バッと自らの財布を開ける。 そこで、静止。 財布の中身とにらめっこをし、何度も負けそうな顔をしていたが、最後にはありったけの通貨をばら撒いた。 くすくすと、自然と笑みが零れる。 「少し多いわ。これは返すわね」 ダイアナは本来よりも少し安い値段を提示し、アシュレイに残りのお金を返した。 気前のいいことをやってもいい。そう、心の中で呟きながら。
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