森山樹
お題ショートストーリー(2010/10/20執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:森山樹
【得票数:4】

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プレイング
 八坂路・繰太(高校生霊媒士・bn0016)を照らすのは、日に一度……まさにその一瞬だけの儚い、それだけに最も美しい茜と紫の競演だ。
「……少し、早くきすぎたか」
 ぽつりと呟いた言葉は高所に独特の、地上よりも強い風に流されていく。
 流された言葉の代わりに、持参した炭酸飲料を小さなボトルから口に流し込んだ。
 少年の足場は不安定な電信柱のその頂点であり、器用にもその上に座っている。
 その不安定な場所で、少しも危なげを感じさせない。
「…………まあ、いいか。現れるのを待とう」
 独り言かとおもいきや、少年の隣に頷く影があった。
 八坂路がいるのは電信柱の上、少年以外の存在が隣にあるなどとは……通常なら、ありえない。
 だが今隣に居るのは、夕暮れと同じ茜色と白を基調にした彩り豊かなシャーマンズゴースト、少年の相棒だ。
 彼らは何も、趣味や嗜好でここに座っているわけではない。
 街を展望できる電信柱の上で待つのは、宵の美しさではなく、おぞましいゴーストだ。
 彼らの待ち人は、陽のあるうちには現れないらしい。
 そして、空からやってくる。
「……綺麗な夕焼けだな……」
 茜と紫のグラデーションが、濃紺の宵闇に押しやられ沈んでいく。
 その流れは潮の満ち干きより忙しなく、雲の流れよりは穏やかだ。
 シャーマンズゴーストの彩りは夕焼けに影響されないようで、少年の隣には豊かな彩がほんのりと発光したまま、ただ前を見据えていた。彼……彼女かもしれないが……には、八坂路のように夕暮れを楽しむ心は無いのかもしれない。
 再び炭酸飲料を口に流し込みながら、頷きすら返さなくなった相棒をみやる。
 立ち上がり、飲料が残ったボトルを電信柱の上に置くと、愛用の『狩猟者の槍』を握りなおし少年は一つ頷いた。
「暗くなってきたな。そろそろか……」
 戦いを予感した無粋なシャーマンズゴーストを残し、八坂路の視界は闇に覆われた。日没だ。
 同時に足元に灯る、無数の平和な灯りとは全く別の、巨大な脚と口を持つ半透明の梟が獲物を求めて街へと降りてゆく。
 全ては闇と同時に訪れ、少年は数瞬も待たずに近くの屋根に飛び移り、屋根から地面へと滑るように移動した。
 低い場所を獲物を求めて旋回するおぞましい梟は、明らかに自分を視界に入れている存在……そして、自分と同じくゴーストである何かに挑発されるまま急降下した。
 シャーマンズゴーストの高揚が八坂路にも伝わってくる。
「さぁ、行こうか」
 力強く『狩猟者の槍』を構えた少年の命ずるまま、シャーマンズゴーストは梟へと突撃していった。
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