12月24日、クリスマスイヴ。 タチアナ・ウィンスレッドは、パートナーのフランケンシュタイン・ジルベルトと共に、街の郊外に妖獣退治を来ていた。 ジルベルトは、タチアナの使用したゴーストガントレットによって強化されたガトリングガンを振るい、最後の妖獣を瞬く間に蜂の巣に打ち抜く。 その攻撃で、力尽きた妖獣の消滅を確認すると、ジルベルトは、硝煙噴くガトリングガンの銃口を下ろした。 戦いも終わり、タチアナが気を緩めた瞬間、彼女は、めまいに襲われバランスを崩す。 なれど、彼女が、転倒の衝撃を覚悟した瞬間、ジルベルトに優しく抱き止められた事に気づいた。 ジルベルトは、そのまま彼女を、お姫様抱っこの格好で抱き上げると、帰るべき街の方へ歩みを進める。そんなパートナーの、意外な行動に、気恥かしさを感じ、頬を赤らめるタチアナ。 (少し恥ずかしいけれど……たまには。こんなのも、悪くない、かも) けれど、タチアナにとって、この状況は、満更でもないようだ。 全く人の気配のない郊外の道端で、その姿を見守るのは、辺りを照らす月のみだ。 「今宵の月は、綺麗ですね」 タチアナは、空を浮かぶ月を見上げ、彼女を守る大切な騎士に語りかける。 普段、ジルベルトが彼女の前に姿を現すのは、戦場であり、タチアナにとって、彼と二人きりで夜道を歩くのは、珍しい事であった。 タチアナは、ジルベルトの腕の中で揺られながら、彼と憩いの時間を共に過ごせる喜びをかみ締める。だが、冷たい夜風は、この憩い時間を邪魔するかのように、タチアナに容赦なく吹きつける。 「あたたかい……」 けれど、タチアナは平気だった。 (ジルベルトがそばに、居てくれるのですもの……) 冷たい肉体の中に息づく、ジルベルトの熱い魂が、タチアナの心に温もりを与えてくれるのだ。 だが、楽しい時間はすぐに過ぎ去るもの……。 ジルベルトが歩みを止め、タチアナに顔を向けると、その先に街の明かりが見える。 その先は日常の世界、ゴーストであるジルベルトの存在は、許されない。 タチアナは、ジルベルトをカードへ封印しなければならない事を十分に理解していた。 「分かっています。でも、今だけは……」 今夜はクリスマスイヴ。 恋人達が愛を語らう聖なる夜。 綺麗に飾られたツリーやクリスマスケーキは無いけれど、仲間達と共に守った平和な街の夜景がある。二人きりのクリスマスパーティーの飾りつけとしては、十分だろう。 タチアナは、ジルベルトの胸に寄り掛かると、瞳を伏せ、呟く。 「メリー・クリスマス」
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