鈴隼人
お題ショートストーリー(2011/04/20執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:鈴隼人
【得票数:36】

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プレイング
 元ショッピングセンターは、すっかり寂れて廃墟と化していた。
「寂しいもんだな」
 佐久間音也はポケットに手を突っ込みながら、雑草の茂る駐車場跡へと足を踏み入れ、小さく嘆息した。
 かつては賑わった場所なのだろう。大勢の人達が毎日行き交い、目当ての物を手にし笑顔で出てきた筈だ。それが今や立ち入り禁止の看板で塞がれ、埃にまみれ、くすんだショーウインドウはあちこち割れてしまっている。
 そのうえ――ここには怪しい噂も最近飛び交っているのだ。

 この場所を調査に訪れた仲間達との待ち合わせまで、まだ時間がある。
 ヘッドホンのボリュームを上げて、音也はゆっくりと建物に近づいて行った。

 ――まあ下見くらいなら。

 仲間達との調査に備え、通路くらい調べておいてあげよう。
 それだけのつもりだった。

 暗いホールを進み、止まったエスカレーターの下を潜り抜けた時だ。
 突然、フロアを仕切る壁からボールが飛び出し、バウンドしながら通り過ぎていく。
「!」
 勿論フロアは無人の筈だ。音也は咄嗟にそこへと駆けこむ。
 するとそこには――鎖で捕らわれたエプロン姿の女性が宙を漂っていた。
「地縛霊かっ」
 咄嗟に攻撃の構えを作り――しかしすぐに断念した。仲間が揃うまで待つべきだ。
 だが踵を返しかけ、彼は再び気付く。
(あのボールは?)
 辺りを注意深く見回す。ヘッドホンを外し、耳も澄ますと、奥から子供の泣き声が聞こえてきた。

「……けて……助けて」

「!」
 音也は舌打ちすると、地縛霊の脇を抜け奥へと駆けた。
 そこにはひっくり返った買い物カートが山をなしており、その一つに子供が閉じ込められているのが見えた。
 外まで戻る暇は無さそうだ。
 音也はカートの山に駆け寄る。それを待っていたかの様に地縛霊が微笑む。
 左右のカートが跳ね上がり、音也に向けて猛スピードで突進してくる。
 死角から跳ねられ、音也の体は強く背中から床に叩きつけられた。
「ぐほっ」
 細い身体の上に次々とカートが勢いよく迫る。思わず頭を庇い身をよじった彼の上を何十往復もカートの車輪が通りすぎていった。
「……くそ……」
 痛みと出血で意識が歪む。
 外れたヘッドホンから響く重低音。それより不快な地縛霊のケタタタという笑い声。――悔しい。しかし、もう……。
 だが音はそれだけじゃない。
 閉じ込められ、恐怖に震える子供の泣く声。彼を助けることが出来なければ、なにが能力者だ。
「……いい加減にしろよな!!」
 悲鳴を上げる体を一気に起し、音也は地縛霊を見据える。
 そして全身の力を振り絞り、声に――魂を込めて一気に吐き出した――!!

「おい、大丈夫か?」
 地縛霊の消えたフロア。カートをどけてやると、震えながら子供は音也に抱きついてきた。
「僕……ママの声が聞こえた気がして……それで……」
 安堵の息をつき、しかし立ち上がる力もない音也が苦笑を漏らしたその時、遠くから仲間達の呼ぶ声が聞こえてきた。
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