樋口安吾
お題ショートストーリー(2011/09/03執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:樋口安吾
【得票数:11】

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プレイング
 赤を含んだ紫陽花色の夕空が、街の上に広がっていた。
「……少し、早く来すぎたか」
 高く空に伸びた電信柱の上に座りながら、八坂路・繰太(高校生霊媒士・bn0016)はぽつりとつぶやいた。
「……まあ、いいか。現れるのを待とう」
 どこかやる気のないようにも聞こえる抑揚のない声が、吹いてきた風にかき消される。
 繰太は手に持っていたペットボトルの中身を一口飲み、その後で自分の傍らに目を向けた。
「お前も飲むか?」
 繰太が話しかけた場所。そこには異形の生物が繰太に寄り添うようにして浮かんでいた。シャーマンズゴースト。繰太が使役する、固い絆で結ばれた相棒。
 シャーマンズゴーストは主の問いかけに首をかしげ、その愛らしい姿に繰太はほんのかすかな笑いを表情に浮かべた。
 街は暮れていく。人々による喧騒は繰太の耳にも届き、風と重なっていびつな音となって聞こえていた。
「きれいな夕焼けだな……」
 その音を聞きながら、空を見つめて繰太は言った。
 本当にきれいな空だった。ところどころにたゆたう雲が夕の中にまだら模様を作り出していて、どことなく幻想的でもある。
 きっと街中にいる人々の何人もが、この美しさに心奪われているだろう。
 だけど、と繰太は思う。
 戦いの前に見る風景にはそぐわない。それでも目は離せなかった。それだけ、暮れていく今日の空は美しかった。
 気付くと、遠くの山稜に陽が隠れようとしていた。もうすぐ、夜が始まる。
「そろそろか……」
 ふいに何かが全身に触れてきた。気配。強いものだ。それを感じた途端、繰太は立ち上がった。
「……行こう、シャーマンズゴースト」
 相棒にそう言葉をかけ、すぐ近くの屋根へと飛び移る。そこから地面に降り、そこではっきりと繰太は見た。女性の形をした、だが明らかに人間とは異なる雰囲気をまとったゴーストの姿を。
 繰太はゴーストの行く手をふさぐように道に立った。そばにはシャーマンズゴーストがいて、主と自分の敵に注意を向けている。
「あら?」
 ゴーストが繰太に気付き、声を上げる。リリスの名にふさわしい蠱惑的な声色だった。
「そっちから来てくれるなんて、探す手間が省けたわ」
 その言葉を聞きながら、繰太は武器である『狩猟者の槍』を握り直した。目の前にいるのは間違いなく、自分たちが探していたゴーストだった。夜の時間帯に能力者たちを襲うリリス。
「空も暮れてきたし、いい時間ね」
「お前はなぜ夜にしか動かない?」
「だって夜のほうが燃えるでしょ。昼から盛るなんて、野蛮人のやることよ」
「それだけの理由か」
「いけない?」
「……まぁいい。おかげで、きれいなものが見えた」
「きれいなもの?」
 それには答えずに、繰太は槍を構えた。そして意識を集中させる。
「さぁ、始めようか」
 それが合図だった。繰太が仕掛け、主の言葉と同時にシャーマンズゴーストも敵へと向かっていく。
 暮れきった街の中、殺し合いが始まった。
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