宮原もも
お題ショートストーリー(2012/02/28執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:宮原もも
【得票数:26】

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プレイング
 目の前を行く鞭の狩猟者・エリザベスの華奢な背中を見つめて、剣の魔獣戦士・クレスは小さなため息をついた。
 風にのり、軽やかな足取りで踊るように歩くその背中は、クレスのよく知る小さなエリザベスのままだ。
「ここ、腕試しにいいかも!」
 そこには、深い雑草を被った古い建物の群れがあった。
 いつもそうだ。振り返ったエリザベスは満面の笑みで、クレスの心配など簡単に握り潰す。
 またため息を吐き、クレスは一度自分の足元に視線を落とすと決意したように顔を上げ、エリザベスの横を通り過ぎた。
「そうだな。だが、手に負えないと感じたらすぐに引き返すぞ」
 自分を追い越すクレスをじっと見ていたエリザベスは、はじかれたように動き出し、その隣に並んだ。
「何言ってんの! 簡単じゃ、腕試しにならないじゃない」
 強気に言うエリザベスを軽く睨みつける。
 その瞬間、エリザベスの足元の草が突然激しく揺れた。
「クレス!」
 エリザベスは飛び上がり、クレスの腕に飛びつく。
 しばしの静寂の後、クレスはまた息を吐いた。
「……ただの小鳥だ」
 空に吸い込まれる小さな影を指差して、クレスは呆れたように鼻で笑ってみせる。
「何? その顔! びっくりしただけじゃない!」
「何も言ってない」
「わ、笑ってるじゃない。絶対バカにしたでしょ!」
 顔を真っ赤にしてエリザベスが土を踏む。
 瞬間……何かが崩れるような音がした。一瞬、二人は動きを止めた。
「何の音だ?」
 クレスの心配を他所に、エリザベスは音のするほうに足を向ける。
「どうせ、体ばっかりでっかいバルバの類いでしょ」
「おい! 待て!」
 追いかけるクレスを振り返って、エリザベスは笑った。小さなエリザベスは、いつでも失敗を取り戻そうとして、また失敗する。
「大丈夫だって」
「エリザベス! 待てって!」
 大地が揺れた。
 突然二人を巨大な影が覆った。
 目前の建物が崩れる。二人の前に鋭いかぎ爪でおもちゃのように崩された瓦礫が落ちてきた。そのかぎ爪の持ち主を確認するために、二人はゆっくりと顔を上げた。
 不気味に伸びる翼。鋭く光る牙……そして、二人を捕らえる恐ろしく凶暴な目……すべてが見た事もないほど巨大だった。
「なにあれ!?」
「俺達で倒せるのか……?」
 クレスは震える自分の体を無理に落ち着かせようと剣を握りしめた。唇をしっかり引き結び、エリザベスの前に出る。引き返すには……遅すぎる。
「下がってろ」
 低く呟いたクレスの言葉に逆らうようにエリザベスはクレスの隣に並んだ。
「倒せるわよ。二人なら!」
 クレスはエリザベスを見た。彼女の瞳は強く輝いている。クレスの守るべき小さなエリザベスはそこにはいなかった。エリザベスの瞳を覗き込んでいたクレスは、強い光に答えるように大きく頷いてみせた。
 二人同時に目の前の巨大な敵に向き直る。
 今はもう、一つの塊のように、二人はそこに立っていた。
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