宮原もも
お題ショートストーリー(2012/03/01執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:宮原もも
【得票数:37】

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プレイング
 ゆるりと陽が昇りはじめた。
 深い闇の淵に沈んでいた街がみるみる浮上しはじめた。
 引き潮のように、闇が街から逃げはじめている。
 陽が運んでくれる温かい光は、急速に建物の間に染み込み、夜の寒さから街を救い出すように、路地の隅々まで行き渡りはじめる。陽を浴びた端から、街が動きはじめた。
 子供を起こす母親の声、朝の挨拶を交わす路地の老人達。仕事に出かける職人のかけ声。
 ジェットは思わず口の端を持ち上げた。
 街を一望できる高台から、彼は街を見下ろしていた。彼にとって、朝日が闇を一掃するこの瞬間は、なんとも気持ちの良いものだった。朝日は、人知れず、街を夜の闇から救い出し、温かさと日常を与える。街の人たちは、それとも気づかず、日々の生活をはじめる。
「俺たちもそうだよな」
 ふと、ジェットは言葉を漏らした。
 人知れず、人々から不安を取り除く。それが、エンドブレイカーだ。
 朝、子供を起こす愛情に溢れた母親の声。
 お互いの体調を心配し、優しい声を掛け合う老人達。
 汗を流し、家で待つ家族のために仕事にせいを出す職人。
 愛を囁き合う恋人たち。
 母の手に抱かれた赤ん坊。
 ジェット自身が失いたくないもの。それらが、ずっとずっと続けばいい……。
「やらなくちゃな」
 温かいこの街を……人々の温もりを守るために。
 自分は、自分たちはエンドブレイカーなのだから。
 それが、生きている意味なのだから。
 自分の命が断たれた時、後悔だけはしたくない。
 ジェットは剣を握りしめた。
 それを合図に、ジェットのお尻の下で、いっしょに大人しく街を眺めていた大トカゲがちろりと舌を出して身じろいだ。
「なんだよ。お前もやる気かよ」
 ジェットは大トカゲに視線を送ると、喉の奥で笑った。大トカゲはジェットに向かって急かすように、低い息を吐いて声をあげた。
「ん?おっと。そろそろいかなくちゃな。みんなが待ってる」
 ジェットは慌てて大トカゲの上に座り直すと、その手綱を引いて、もう一度、街を見下ろした。
「じゃあな、行ってくる」
 ジェットは、誰に言うともなく、強い口調で言った。
 それが、エンドブレイカーだ。
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