都市国家の門をくぐり、町中へと足を踏み入れたところでトンファーの群竜士・リーは中心部を見上げた。都市国家を象徴する巨大な槍のモニュメントを中心に、いくつもの建物がひしめき合うように並んでいる。 「町並みの雰囲気は今までと変わらないな」 若干の文化の差異はあれど、街の中心部から城壁に向かって町並みが広がる様子は変わらない。そして、住民が生き生きと生活を楽しんでいる様子も。 隣を歩いていた魔法剣士・ダリアがふっと笑う。 「どの都市国家にきても、人々の活気は変わらないものだな……」 確かに、とリーが笑う。 「さて、どっちに行ったもんだか」 「ん、ちょっと待って」 リーが首をかしげると、一歩後ろを歩いていた剣の城塞騎士・フローラが懐から地図を取り出した。他の2人も立ち止まると彼女の手元をのぞき込む。 「さっきのおじいさん、この辺の事を詳しく教えてくれて助かったわ。ええと、今いるのはここだから……」 フローラの指が城門から現在位置までの道筋をたどる。 「そうね。まっすぐ行くと職人街。右手には城塞騎士団の詰め所、左手には市場があるはず。町の人達に馴染むなら、まず市場はどう?」 「どうする?」 特に異論はないらしいリーがダリアに目を向ける。ダリアもまたこくんと頷いた。 「ん。私に異論は無いよ。町の人から話を聞く事は、この都市国家について詳しく知る、良い機会にもなるだろうし……」 話している途中でダリアの言葉がとぎれた。 彼女の視線が地図ではなく、別の一点に向けられる。 「……どうした?ダリア、そっちには何もいな……。いや。そうか、そういう事か」 不審そうな顔になったリーは、ダリアの視線の先を追ってその原因に思い至った。 フローラもまた不穏な気配を感じ取って眉を寄せる。 「この、嫌な感じは……。どこかにいるのね?マスカレイドが」 「ああ、どうやらそうらしい」 ちりちりと棘の気配が3人の感覚を刺激する。誰かに危機が迫りつつあるという事実に気持ちがはやる。 「この都市国家にも、棘の気配は十分なようだな。なに、だとしたら俺達のやるべき事は一つ。早速情報を集めて、奴らのエンディングをぶっ潰してやろうぜ!」 リーは努めて明るく2人に笑いかけた。 フローラは改めて地図を指し示す。 「じゃあ手分けして情報を集めましょう。私は騎士団の方を回ってみるから、そっちはお願いね」 場所を確認してダリアは頷く。 「きっと今もどこかで、誰かが私達の助けを待っているに違いない。もたもたしている時間は無い、行こう!」 3人は悲劇を食い止めるためそれぞれの聞き込み場所へと散らばっていった。
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