古賀伊万里
お題ショートストーリー(2014/07/04執筆)
  作品の参考として、「お題イラスト」と「プレイング」を元にしたショートストーリーを執筆しています。ログインすれば、人気投票にも参加できます!

【執筆者:古賀伊万里
【得票数:6】

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プレイング
 十二月二十四日、きらめくイルミネーション、華やかなケーキ、寄り添い歩くカップル。クリスマスイヴは街中を浮き立たせる。
 けれどタチアナ・ウィンスレッドにそれらは無縁のものだった。彼女は今宵もゴースト討伐に駆け巡る。
 街から離れた暗く冷たい場所を歩き回る。気配がする、と思った瞬間妖獣は現れた。痛みに狂い暴れ回るその姿は、哀れみすら誘う。彼らにも、聖夜は何の意味ももたらさない。
「ジルベルト」
 タチアナは静かに、愛しいフランケンシュタインの名を呼ぶ。イグニッション。私はジルベルトと共に、この世界を守る。タチアナの決意は固く、その魂は、強い。
 ゴーストガントレットとゴーストアーマーでジルベルトを強化する。こちらに向かって突撃してくる妖獣に、迷わずガトリングガンを浴びせかけさせた。
 妖獣は瞬時に蜂の巣になり、倒れる。
 今宵は苦戦せずに済んだ。ほぅとひと息つこうとしたら、景色が歪んだ。すわ未知の敵か、と混乱したところに、ジルベルトの腕がやってきて、タチアナを支えてくれた。
「……ありがとう」
 緊張か疲れから来たのであろう、ただの眩暈だったようだ。
 迷わずに私を支えてくれるジルベルトの、花嫁でよかった。これは恋だろうか。愛とも言える。家族かもしれず、友人かもしれず、恋人に近いものかもしれない。この気持ちに名前をつけることを、タチアナは諦めていた。
 もう大丈夫、とタチアナはそっとジルベルトの腕をほどこうとした。けれどジルベルトはそれを許さず、逆に抱きかかえてしまった。
「きゃ」
 完全に体重を預けてしまったことと、触れ合う面積の大きさに、タチアナは頬を赤くした。けれど、……たまには。こんなのも、悪くはない、かも。タチアナはすぐ傍の男の顔に、微笑みかける。
 夜の郊外、道端に人影はない。道路は弱めの外灯に照らされ、冬の切なさを思わせる。
 ふたりきりで、道を行く。今夜はもう帰るのだ。
 吐いた息が白く凍る。それを追いかけた目が、冴え冴えと光る月を映した。
「今夜の月は、綺麗ですね」
 こんな風にジルベルトと夜道を歩くなんて滅多にないことだと、タチアナは胸の内をあたためた。クリスマスイヴの奇跡と言ってしまってもいいだろうか。
 出来るだけ、ゆっくりと歩いて欲しかった。この小さな奇跡を噛みしめるために。
 真冬の夜風は冷たいけれど、ジルベルトが一緒なら平気だと、タチアナは微笑した。だってこんなにも、あたたかい。
 タチアナにはよく分かっていた。この幸福な時は、かりそめの時間なのだと。街が近づいたらイグニッションを解いて、ジルベルトを再びカードに封印しなければならない。
 分かっています。
 でも、今だけは。
 ジルベルトの胸によりかかって、瞳を伏せ、呟いた。
 メリー・クリスマス、と。
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