<汚れ仕事というものは>
■担当マスター:コブシ
そこは臭いだけでなく暗かった。「先は真っ暗、俺たちのお先も真っ暗〜ってか」
「気の滅入ること言うなよ……」
そこかしこから水音が響いてくる。下手な素人の一団の音楽のようだった。空気は常に動いているが、この下水の臭いはどうしようもない。
この陰気な石組みの地下通路には、街の家々からの廃水や雨水、汚水という汚水が全て集められてくる。どこかに汚水を綺麗にして再利用する仕組みもあるという話だが、ここはまだ単なる『下水道』でしかない。
その、『下水道』の排水管の一部が詰まってしまったらしい。
所定の場所に汚水が流れてこないという。
その対応として下水道掃除の仕事の話が持ち上がり、彼ら2人は「懐具合が寂しいので小遣い稼ぎに」、と手をあげたのだ。だが、前を行く男はすぐに「割に合わない」と思い始めるようになった。
「まだ濡れないですむ場所で良かったじゃないか。もっと下層だと完全に水没しててもおかしくない」
大人の歩幅で5歩ほどの水路の両脇には、人1人がやっと通れるほどの木製の側道が設けられてあり、彼らはそこをおっかなびっくり進んでいた。
やがて、ありがたいことに天井がうっすら光る場所に出た。左右から汚濁した支流がいくつも流れ込んできている。その上を、側道と同じく木製の頼りない吊り橋を渡って進み……そして彼らは、目的の場所と思われるものを発見した。
「ここだな……」
水がほとんど流れてきていない支流。
2人はその角を曲がり、上り勾配を進む。しばらくして、前を行く男が急に立ち止まった。後ろにいた男は何事かと背伸びをして前を見やった。
……最初は壁かと思った。
水路全面に立ちふさがる壁。だがその表面はぷるぷると震え、天井の薄明かりを反射して波打っている。半透明のその表面の向こうに、大量の生ゴミやガラクタ、渦巻く汚水が見えた。『壁』はよく見ると3つの塊が合体したもののようだった。
ガシャン! と、男が落としたカンテラが大きな音を立てた。
その音に反応したのだろうか。
『壁』の一部が動き、伸びて、男たちに向かって襲い掛かってきた!
「うっ」
「うわああ!?」
前にいた男はその触手に絡め取られた。
後ろにいた男は死に物狂いで走った。背後から助けを求める声が聞こえたが、その声は突然断ち切られるように絶えた。
それでも、必死で逃げる男の耳に、先ほどの叫び声と、骨が砕けるような嫌な物音がこびりついて離れなかった。
晴れの日が続き、都市の最上層から見える空は、からりと爽快に青かった。
「私たちが綺麗な水を使えるのは、汚い水をきちんと処理できているからなんですよね」
明るい色の石で舗装された道の側溝から視線を上げて、竪琴の魔曲使い・ミラは居並ぶ面々を見渡した。
「下水道に、特定の形を持たないゲル状の怪物……スライムが現れて、汚水を詰まらせてしまっているんです」
ミラは先日起こったという事件について語った。
「マスカレイドが関わっている訳ではありませんが、都市の、私たちの生活の根幹に関わることです。綺麗な仕事ではありませんが、必要不可欠な、大事なお仕事です。……既に犠牲者が1人出ています。退治の人員を募っておられるので、皆さん、引き受けてはみませんか?」
今まで排水口の奥へと流してきた諸々を思い起こし、「ううむ」とエンドブレイカーたちはうめいた。
「スライムは体の一部を触手のように伸ばして相手を縛り上げてくるらしいので、それらをかいくぐって攻撃することになるのでしょうけど……」
ミラは少し困ったような顔をした。
「下水道の両脇にある側道は狭く、人1人がやっと、なんだそうです。側道からだと近寄って直接何か出来る人数は2人に限られてしまいますね。水路はスライムによって詰まってしまっていますし、他の水路よりやや高い位置にあるので下水はないということです。だから水路に下りて近づくことも出来るのでしょうけど」
とても汚れます、とあくまで真面目にミラは言う。
「水路の深さは大人の身長程度なので側道に戻るのは難しくないでしょう。でも、スライムが全て退治された後、詰まっていた汚水が一気に噴出して押し流されてしまう危険があるということです。水路を行く場合はその点を注意してくださいね」
ミラは空を振りあおいだ。
「……1ヵ所が詰まっても下水道はまだ機能していますが、今後どうなるかわかりません。あふれて、逆流してしまうことも考えられます」
下水道に関する色々な汚いイメージがエンドブレイカーたちの頭の中をよぎっていく。……しかし、汚れ仕事は綺麗に片をつけてこそ価値があるのだ。
ミラの頼みを引き受ける声は、力強いものだった。
●マスターより初めまして、コブシといいます。オープニングを読んでくださってありがとうございます。 出来るだけ自然体の描写を心がけていきたいと思います。よろしくお願いします。 スライムは全部で3体、『見る』能力は無いタイプで、大きな物音や衝撃に反応します。周囲は水音で結構やかましいので、大声を出したり物音を立てなければ簡単に近づけそうですね。 天井はうっすら光っているので、明かりを特に用意する必要はないでしょう。 触手の数は1本ではありません。 3体全て倒せた後、いったいどんな状況になっているのか。想像してわたしもどきどきひやひやしています。 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております! |
●参加人数
10人<参加キャラクターリスト>
このシナリオに参加するキャラクターは下記の10名です。
槍のスカイランナー・ルーウェン(c05377)
弓の狩猟者・アスタル(c03668)
大剣の魔獣戦士・シド(c00478)
ナイフのスカイランナー・シダ(c00835)
エアシューズのスカイランナー・サジ(c05334)
爪の魔獣戦士・ヒスイ(c02936)
槍の魔法剣士・ジン(c00047)
弓の狩猟者・ショーティ(c01093)
太刀の魔法剣士・ヨゴレ(c01688)
剣の魔獣戦士・カイナ(c02884)
<このシナリオに参加する皆さんへ>
現在、リプレイ執筆中です。リプレイの発表は、2月16日(火)を予定しています。
リプレイ発表まで、楽しみにお待ちください。
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アイスレイピアの魔法剣士・クロエリオル(c03035) 2010年01月30日 01時 ふむ、成る程。こういったお仕事も大切ですからね!ええ、このクロエリオル…参加希望とさせていただきますよ!どうぞ、よろしくお願いします… |
太刀のスカイランナー・エイナス(c01207) 2010年01月29日 22時 こんばんは、私はスカイランナーのエイナス。私は正直、面白半分で首を突っ込ませてもらうわ。初戦の相手はスライム、これはある意味古来より伝わるお約束だからね。 |
鞭のスカイランナー・ダウト(c01015) 2010年01月29日 22時 タイトルを見てビビッと来たぜ、参加希望だ!俺様にぴったりの仕事じゃないか!大成を成すにも最初は皿洗いかドブ掃除からって言うしな! |
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