<三勇者決戦 第3ターン結果>
第3ターンの開始状況
大魔女スリーピング・ビューティと七勇者の戦いを描いたステンドグラス。そのステンドグラスは、世界の危機を救うために旅立った……大魔女スリーピング・ビューティに立ち向かった勇者は総勢僅か四百人であったと伝えている。
そして、四百人の勇者達の中でも滅びの大地にまで至り、六勇者を大魔女スリーピング・ビューティの城へと送り出した者達は、ニニギアメツチノミコトによって塩の柱とされ、壊滅したことが、滅びの大地を旅した11名のエンドブレイカーによって明らかとなった。
だが、それまでの旅路でも多くの勇者が犠牲となっており、六勇者はそれらの勇者を再現した存在を、手勢として加えていた。
かつての三塔戒律マギラントの戦いでも姿を見せた、『再現された』勇者達。
先の戦いでは意志を持たぬ傀儡であった彼らは、この戦場において、より深く『再現』された姿を見せていた。
●椛の紅葉ジューマ
「まったく人使いの荒い娘だね。まぁ、わざわざ復活させてもらったんだから、働くのはやぶさかじゃないよ」
「復活……なの?」
「いや正確には違うのかい? アンデッドではないけどねぇ」
古の勇者そのものではないにせよ、意識を持っているとなると話は変わって来る、とエンドブレイカー達は考える。
今後の戦いで、四百人達が、六勇者の忠実な配下として動く可能性があるからだ。
もっとも、四百人の中にはアウィンを連れて滅びの大地から撤退した者なども居たらしいので、全員が現れるわけではないだろうが。
「何にせよ、あんたらが『勇者』ってんなら、あたしらだって倒せるだろうさ」
紅色の装束が風のように迫るのを、エンドブレイカー達は体に走った衝撃と共に知る。
彼女達が率いているのも、ジューマ等より質は悪いながらも、再現された過去の英雄達だ。
その数は少ないが、強力であることをエンドブレイカー達はよく理解している。
「でも、あなた達を倒さなかったら、六勇者に勝つどころの話じゃないから!」
トンファーのスカイランナー・ツィナ(c14468)の声を共に、ジューマ軍との戦闘は開始された。再現された勇者達は精強だが、その分だけ、
「数は多くないよ!」
今のエンドブレイカー達の中には、実力でも比肩しつつある者が現れている。
強力な再現英雄達に比肩しうる……エンドブレイカー達の実力もまた、かつての勇者達のような領域に足を踏み入れつつあるのだろう。
「だからって、そう易々と負けるわけにはいかないね!」
強烈な一撃を繰り出した瞬間に生まれた一瞬の隙をついて、ツィナのトンファーが、ジューマの胸に撃ち込まれる。
その打撃音に、ジューマの倒れる音が続き、彼女の率いる軍団との戦いは終わりを迎えるのだった。
●薫風の乙女シェーレ
「ボクの名はシェーレ! これ以上は通さないんだよっ!」
再現英雄達の先陣を切って突っ込んできたシェーレに対し、
「アリッサムお姉さまの敵なら、ボクの敵だ!」
その体には、マスカレイドであることを示す白い仮面が現れている。
仲間同士の連携を引っ張りながら、紫風天翔・レイラ(c03886)はシェーレの元へと切り込んでいった。
過去の勇者……それも自分と同じく暗殺シューズを使うシェーレの動きを、レイラは冷静に観察する。
「そんなに遅い動きで、暗殺シューズの性能を生かせるのかな!」
挑発めいた言葉を投げ掛けて来るシェーレに対してレイラは無言で距離を保つことに務める。
持前のスピードで攪乱するのを狙っていたシェーレだが、レイラの冷静さに、焦れたような動きが混じり始める。
「……なるほど、私はやはり異端のようですね」
「……!?」
観察を終えたレイラは、シェーレの移動地点を予測すると、瞬間的に地面へと足を連打で叩き付けた。
宙を舞うシェーレが地面に触れ、跳躍しようとする。
その一瞬の着地点が、シェーレの命取りとなった。
収束したソニックウェーブが、シェーレの小柄な体を凄まじい勢いで穿ちながら弾き飛ばし、近くの壁面に叩き付ける。
「かはっ……!」
「動きを見せすぎましたね」
「やるなぁ……あはは、君なら乙女隊に入ってもやってけるよ」
「あいにくですが、遠慮しておきます」
「それは……残念……かな……」
その言葉と共に、シェーレの姿は消えていく。
自分と同じ武器を扱う勇者の再びの『死』を、レイラはじっと見つめていた。
●南風の乙女ペリレン
南風の乙女ペリレンの率いる軍団は、悠然とエンドブレイカー達を待ち受けていた。
ペリレンもシェーレと同様、古の四百人の勇者の一人にして、当時アリッサムの親衛隊だった『乙女隊』の一員であったという女性の勇者である。
今のエンドブレイカー達がそうであるように、勇者の中にも女性は多かったようだ。
「あ〜あ、この配置なら戦わずに済むかと思ったんだけどねぇ」
「古の勇者の力、見せて貰います」
空のストレイター・ハギオス(c01797)が槍を振るうと、ペリレンとの間で火花が散った。
互いの攻撃を撃ち落としあっているのだ。
「うわ、つよ……やるなぁ」
「そちらこそ。ですが、勝つのは俺達ですけどね!」
「それじゃ、生き残るために最善を尽くさせてもらおうかなぁ」
そこからが古の勇者の本領発揮だった。
周囲の敵をも利用し、こちらの動きを束縛しながら動きまわるペリレンを追い、ハギオスは槍と共に敵陣を貫いていく。
「あー、なんで戦ってるんだっけ? ……まあいいや。敵だしね、敵は倒さないとねぇ」
棘(ソーン)の影響か、それとも『再現』された際に仕込まれているのか。
思考をエンドブレイカー達との戦いへ誘導されるペリレンの姿に、ハギオスは憐憫の念を抱かずにはいられなかった。
「今のあなたは、『勇者』じゃないな……」
「んー、そうなのかなぁ?」
かつての時代、絶望のエンディングを見せつけられた人々は戦う意志を挫かれ、大魔女スリーピング・ビューティの軍勢に立ち向かおうと考えることすら出来なかった。
だが、絶望のエンディングに屈せず、それでもなお、終焉に立ち向かおうとした者達。
絶望的な終焉に立ち向かう勇気を持ち合わせていたことこそが、彼らが『勇者』と呼ばれた理由なのだ。
勇者達は戦う力を持たぬ少年アウィンを除いては誰一人としてエンディングを打ち砕く能力を持たず、そして当然の帰結としてエンディングを決する力を持つ大魔女スリーピング・ビューティの前に敗れ去った。
意志なくして戦う今の再現英雄達の姿は、勇者達の存在そのものを貶める、悪質な模倣だ。
それを止めねばならないと、ハギオスは槍を構え直した。決着をつけんと足を踏み出す。
「全てを貫く槍の力、お見せしましょう!」
「!!」
体をぶつけるような勢いでハギオスは雷撃を纏った槍を投げつける。
その槍の穂先はペリレンの振るった鞭に軌道をずらされながらも、古の勇者の体を捕らえ、貫き、そして決着の響きを上げさせる。
「うわ、勇者3人全滅ぅ……? ダサいったらないなぁ、もう……」
「いや……強かったよ」
苦笑気味にいいながら消えていくペリレン。ハギオスは一礼して、彼女を送るのだった。
●忍軍若棟梁コゲンタ
かつてのアマツカグラの拠点を巡る戦いの中で嗤う影・ナイル(c22425)が放った言葉は、楔のように指揮官たるコゲンタの中に刻み付けられていた。
(「拙者は勇者マギラント殿に従う者。……だが、異国の者が拙者の主であったか……?」)
忍者に禁物の迷い。
それは部下達にも伝播していた。
さらに勇者マギラントに前衛に立たされ、エンドブレイカーとの戦いを繰り広げる中で既に何人もの忍者達が倒され、エンドブレイカー達からの説得によって拒絶体から元の人格を取り戻している。
そうした様子を見るにつけ、コゲンタ自身の迷いもまた膨れ上がっていた。
「拙者は……!!」
迷いながらも放った竜巻の術が、反対側から飛んだ手裏剣によって止められた。
「何奴!」
「そっちこそ、お前さんは誰で、誰のために戦ってんだ?」
ナイフとムーンブレイドを手に、ハッピーリバースデイ・リツキ(c20969)はコゲンタの迷いを見抜いたように言った。
動揺しながらも忍犬に攻撃を命ずるコゲンタ。
だが、その攻撃は主人の迷いを反映したかのように鈍いものだ。
リツキとコゲンタ、忍者同士の戦いは、やがて実力では大きく上回るはずのコゲンタが追いつめられるという結果へと行き付く。
「こ、このような……!」
「なぁ。お前さんの本当の主君ってのは、もう居ないんじゃあねぇのかい? したらお前さん、自分を騙した相手のために働いてる事になっちまうぜ、これが」
「……!!」
覆面の向こうで、コゲンタが愕然とするのがリツキには分かった。
両手にそれぞれ取り出した手裏剣を、素早く抜き撃ちで解き放つ。
「もう、取り戻してもいい頃だぜ、その仮面から、お前さん自身をな!」
両足に現れていた白い仮面を、リツキの手裏剣が剥ぎ取った。
倒れたコゲンタはすぐに起き上がり、自分を見下ろすリツキを戸惑ったように見上げる。
「……ご迷惑をおかけしたようでござるな」
「かはは、まあ重畳ってトコ?」
コゲンタに笑ってみせると、リツキはコゲンタに手を貸し、立ち上がるよう促す。
周囲の忍者達の体から消えていく仮面は、彼らが忌まわしき仮面から解放されたことを示していた。
●黒鉄兵団軍師マオーグ
「エンドブレイカーどもめ、正面から決戦を挑んで来るとは! よほどワシの策略を恐れたものと見える!」
そう豪語する軍師マオーグだが、実際のところ彼は策略など立ててはいない。
勇者マギラントの立てた策戦に従っているに過ぎないのだ。
「ワシに従っていれば勝者たるは確実よ! ついて来い、皆の者!」
だが、花戯・オペラ(c17726)は、マオーグが気付いていないことを指摘する。
「でも、ここって確実に私達とあたる位置ですわよね?」
「な、何!?」
マオーグはもちろん、その部下達にも同様が走る。
どうやら、彼らは自分が中盤戦で使い捨てられる位置に配置されていることも、把握していなかったようだった。
同様するマオーグが紋章を描き、エンドブレイカー達の接近を阻もうとする。
飛来する風の槍をオペラはフレイムソードで切って捨てると、そのままマオーグの胸元へと潜り込んだ。
「悪いですが、ここで倒させてもらいますわ!」
強烈な衝撃がマオーグの胸を貫き、新生黒鉄兵団の軍師はへなへなと崩れ落ちる。
勝利を確信すると共に、オペラは仲間達に一気に敵を突破するよう促すのだった。
●大盾のゴレムガー
紋章院を中心とした一帯を拠点とした勇者マギラント軍。
エンドブレイカー達の前進を阻んだのは、まさに盾そのものとも言うべき姿のゴーレムだった。
『ゴレームガー! ガード!!』
巨大な盾を備え付けられたゴーレム達が、マギラントの居る紋章院を守るように展開する。
それらを観察し、翠緑の術士・イシェト(c03660)は短く告げた。
「なるほど、頑丈さが取り柄のデコイですか」
勇者達としては、このゴーレムを置いておくことで時間を稼ぐつもりであったのかも知れない。だがエンドブレイカー達の勢いは、そのような思惑など吹き飛ばすほどに迅速で強烈なものだった。
「手間取ってはいられませんね」
ゴーレムの群れとエンドブレイカー達とがぶつかり合い火花散る戦場へと、イシェトは身を躍らせる。
こちらに目をつけ、襲い掛かって来るゴーレム達に対し、手を振り上げてレギオスブレイドを召喚。
呼び出された邪剣の群れへと、
「盾を避けて、本体を狙いなさい!」
盾状の体、その奥にあるゴーレムの核。それを狙うように、レギオスブレイドは盾の真横からゴーレム達を刺し貫いていった。
動きを止めるゴーレム達。その中には、指揮役のゴーレムであるゴレムガーも混じっている。
「いくら強き盾だろうとそれを生かす戦術が不十分ではね」
マギラントが聞いたら憤死しそうなことを言うと、イシェトは仲間達と共に紋章院の中へ足を踏み入れていくのだった。
●白の鳥姫シャラン
戦場に、美しい白い鳥の姿があった。
まるで舞い踊るように戦うその姿は、幻のように美しく、そして儚く強かった。
「あなた達がエンドブレイカー……私たちピュアリィが女王と戴く勇者シャルムーンに仇なすもの……」
白の鳥姫シャランは、眼前に集うエンドブイレカーの群れを前に、その翼を広げて威嚇してみせる。
「あなた達が、罪もないピュアリィを殺伐し、時に、おっぱいをもみしだき蹂躙してきた事を私は知っています。その私が断じましょう、あなた達こそが悪であると」
シャルムーンの配下に加わった事で、ピュアリィとは思えない程に非常に高い知性を得た彼女の言葉に、エンドブレイカーの幾人かは目を泳がせた。
おっぱいという単語に何か心当たりがあったのであろう。
「それは、あなた達が人間を襲うからでは無いですか?」
水月・アーシェス(c11972)の冷静な反論に、シャランは甲高い嘲笑とともに返答した。
「私たちピュアリィも、人間に襲われて命を落とす者がいる。ならば、我々が人間を襲うのも、また、認められる行為ではないのかしら」
彼女の言葉は尤もに聞こえるが、だが、普通のピュアリィは、彼女のような高い知性を持たず、本能のままに行動する。
つまり、バルバや他の野生の猛獣と同じことで、駆除する事に問題は無い……問題は無い筈だ。
「その目は私たちが猛獣に過ぎないと言いたいのかしら? なら、どうして、私たちを性的に襲う下種の人間やエンドブレイカーがいるのかしらね」
彼女と彼女の仲間は、奴隷としてランスブルグに連れてこられたピュアリィ達であり、その彼女の言葉は、一部の人間と一部のエンドブレイカーが持つ、双つの柔らかな山に対する欲望を浮き彫りにしていた。
やっぱり、目を泳がせる一部のエンドブレイカー。
が、目を泳がせたのはほんの一部にすぎない。
「あなたの言う事は、ある意味正しいでしょう。一部の品性にかける者たちが、あなた達を傷つけた事も認めましょう。でも、あなたはマスカレイドの仮面をつけてしまった。マスカレイドとなったあなたに、ピュアリィという種族を代表する権利はありません」
アーシェスは、おだやかな口調でそう説明すると、見えない衝撃波を撃ち出した。
強烈なフォースボルトの衝撃がシャランの体を打ち据え、わずかに体を覆っていた装備を弾き飛ばす。双つの山があらわになり、そして揺れた……。
だが、アーシェスは全く動揺せず、断末魔の叫びをあげるシャランを憐憫の表情で見つめたのだった。
「マスカレイドに堕ちる前のあなたに出会えていたら……。私たちはあなたを救う事ができたかもしれないですね」
そう言い残して、アーシェスは戦いの場を後にした。
戦いはまだ続いている、三勇者決戦を勝利に導くため、まだ彼にはやらねばならない事が残っていたのだから。
●花売り少女ヤーユ
鉄壁街の市街地で、エンドブレイカー達は戦い続けていた。敵の戦力は多くは無い筈なのだが、どうにも手こずっていた。
そして、この入り組んだ市街地という地の利をもって、エンドブレイカーの進軍を阻んでいたのは、花売りのヤーユとその配下のマスカレイド達であった。
「おにいちゃん、おねえちゃん、まだまだヤーユとあそんでくれる?
わたし知ってるんだ、エンドブレイカーのおにいちゃんやおねえちゃんの中に、わたしみたいなちっちゃい子が好きな人がたくさんいるってことをね。ふふふふふ」
妖精のような軽い足取りで、入り組んだ路地をかけぬけながら、ヤーユは、エンドブレイカー達を翻弄するように戦い続ける。
それは、まるで、たのしい鬼ごっこをしているかのように。
「残念だが、これ以上、ここで足止めされるつもりは無いぜ」
しかしヤーユの鬼ごっこは狂気の天秤・ヒム(c16638)のムーンブレイド『XVIII THE MOON』の前に終わりを告げようとしていた。
いつのまにか彼女の周囲にはマスカレイドは誰もいなくなっていた。
逆に言うと、決して多くは無い戦力で、ここまで戦い続けた方を褒めるべきなのだろう。
「そ、そんな……」
逃げ道を塞がれた、ヤーユが苦し紛れの攻撃に転ずる。
だが、それを許すヒムでは無い。
「これで、ゲームオーバーだな」
そう言って月光煌星砲を撃ち出そうというヒムに、命の危機を感じたヤーユは媚びるように微笑みかけた。
「あなたはあそんでくれないの? わたしはあそぶのとくいなのよ。おかあさんの花園が枯れちゃって売る花がなくなった後もね、わたし、お花をうって暮らしていたんだから」
少女とは思えない妖艶な表情で、ヤーユはじゅるりと舌なめずりをした。
「さいしょはいたくてくるしくていやだったけど、そのうち、とってもきもちよくてたのしくなったんだよ。だから……」
そういいながら、町娘の服のボタンをひとつづつはずすヤーユ。
ヒムは一瞬だけ痛ましい表情になったが、すぐに表情を改めヤーユの幼い体とマスカレイドの仮面をムーンライトシュートで撃ち貫いた。
「生活が苦しくてマスカレイドに堕ちたんだな。だが、世の中にはどんなに辛くても苦しくてもマスカレイドになどならない人がたくさんいるんだ。お前にも、その強さがあれば……」
ヒムは、そう言うと、切り裂かれ消えゆく仮面を一瞥すると軽く目をふせた。
それが、多くのランスブルグのエンドブレイカーを騙して死に誘った花売り少女ヤーユの最後であった。
●秘蹟の吟遊詩人チィゼッタ
戦場に歌声が響き渡る。それは、秘蹟の吟遊詩人チィゼッタの歌声。
エンドブレイカー軍の侵攻によって苦戦を強いられているマスカレイド達を鼓舞する歌声は高く低く響き渡る。
それは、ランスブルグの英雄、若草の乙女アリッサムと勇者シャルムーンの加護を祈る歌であった。
「さぁ、古の勇者とともに、いざ立てよ戦士達。我らにはアリッサム様とシャルムーン様がついているのです」
チィゼッタの鼓舞にマスカレイド達が歓声をあげる。
エンドブレイカーに倒された聖者コルリなど、シャルムーンの軍勢の中では一番の小物でしかないのだ。
「ずいぶんと都合が良くて安っぽい扇動ね。それで秘蹟の吟遊詩人なんて恥ずかしく無いのかしら」
空蝉・ケイカ(c03573)は、秘跡の吟遊詩人のアジテーションに嫌悪の表情を見せつつ蝶が舞うように華麗な動きで、チィゼッタへと向かっていく。
鉄壁街の多くの人々はチィゼッタの扇動に乗り、勇者が善で、エンドブレイカーが悪であると思い込まされていた。
もし、鉄壁街への潜入や関所の解放に失敗していれば、チィゼッタが、マスカレイドでは無い一般市民を、肉の盾として前面に押し出してきただろうことは想像に難くない。
「こういう、絡め手をつかう敵は残しておくと厄介なのよね。だから……、逃げられると思わないでよ」
このケイカの言葉に、チィゼッタは見下すように言い返す。
「あら、私の歌声を最前列で聞きたいというのかしら? でもね、あなたのような飲んだくれなおばさんに、聞かせる歌なんて……無い!!」
チィゼッタは、そういうと、素早い動きで腰を落とした。
「私が吟遊詩人だからといって、甘く見ると痛い目を見るわよ。私は、あんな外見だけのコルリなんかとは違うのだからっ!」
どうやらチィゼッタは、聖者コルリに何か劣等感を持っているようだ。
それは、おそらく外見に関する事なのだろう。
だが、
「マスカレイド同士ってやっぱり仲が悪いのかしら? でも、そんな事を気にしている余裕なんて、あなたには無いと思うわよ」
ケイカの言うとおり、いつのまにか、チィゼッタの周囲にはマスカレイドの影が無くなっている。
慌てるチィゼッタ。だが、その隙にケイカは地面に手をつくと力を込めた。
大地が盛り上がり、巨大な拳を形成していく……。
「これが、脈動する大地の拳ですよ。潰れなさい」
チィゼッタはその剛拳の風圧にたじろぎ身震いした。
(「これは……躱せない……」)
風圧にたじろいだチィゼッタに、唸りをあげて剛拳のストレートが炸裂する。
一発、二発、三発……。
そして、チィゼッタは剛拳三連発の前に力尽きたのだった。
「そんな、コルリ如きが何度も逃げ延びたエンドブレイカー如きに、どうしてこの私が……」
チィゼッタは殴られて醜く変形した顔に驚愕の表情を浮かべながら、ひしゃげ潰れて息絶えた。
「そういう、人を見下す所が悪かったんじゃ無いかしら? 勿論、コルリが優れてるなんてことは無いけれどね」
ケイトは、チィゼッタの潰れた死体ににそう言葉を掛けると、戦場を後にした。
●盾の奴隷王ディーダス
勢力の長である狂王アニール、闘技奴隷軍を率いる王虎アルギオスらが待ち受ける闘技場の
前では、盾の奴隷王ディーダスがエンドブレイカー達の進軍を遮っていた。
かつては闘技場へ訪れる女性客を沸かせていたというその美しい顔は、マスカレイドとしての変異によって獣の如き形相へと変貌を遂げている。
「憎きは我が顔……美しい顔など嫉妬を招き、貴族どもを喜ばせるに過ぎん」
その称号に恥じない軍勢の盾たらんとする気概を見せるディーダスに、槍の魔想紋章士・アーネスト(c29236)は己の力を振るうことを決める。
「我が紋章士としての力を総動員し、敵を討ち果たしましょう」
「来い、エンドブレイカー! 我が盾は全てを受け止め、跳ね返すぞ!!」
アーネストの気合いに反応するように叫ぶディーダス。
闘技奴隷達が、その指示を受けて動き出す。
乱戦模様の中で、アーネストの意識は透き通るように明瞭だ。
空中に描かれた名女優ソァラの紋章……すなわちブルームスターの紋章から力ある歌声が響き渡り、傷ついた仲間達に癒しをもたらす。
「回復だけで勝てるものかよ!」
「ええ。だからあなたに勝つための力を蓄えるために使う!」
ブルームスターの紋章の歌声がもたらす力が、アーネストの全身に行き渡ると共に彼の手が空中に紋章を描き出す。
その紋章の名は、戦うべき相手のものだ。
「それは……!!」
「狂王アニールの紋章よ、我が声に応えその力を解放せよ!」
狂ったような……いや、狂気そのものとも言うべき哄笑が、ディーダスを襲った。
「く……おお……! 敵の力すら、己のものとして利用するか……!!」
己の守るべき狂王アニールの紋章の力を受けて、ディーダスの体から力が抜けていく。
「勝利、ですね」
それを確信しながら、アーネストは仲間達に勝利を告げる。
見事な戦力配分で完全勝利を収めたエンドブレイカー達。
三勇者決戦は、勇者達の企図したよりも遥かに早く、佳境を迎えようとしていた。
あなたの戦闘結果(FLASH版/HTML版)
戦場(リンク) | 参加者 | 結果 | 棘(ソーン) |
---|---|---|---|
椛の紅葉ジューマ | 341 | 6勝0敗 完勝! | 1814⇒0 |
薫風の乙女シェーレ | 367 | 7勝0敗 完勝! | 2196⇒0 |
南風の乙女ペリレン | 360 | 7勝1敗 勝利! | 2196⇒0 |
忍軍若棟梁コゲンタ | 295 | 13勝0敗 完勝! | 【拒絶体】1606⇒0 |
黒鉄兵団軍師マオーグ | 331 | 10勝2敗 勝利! | 1966⇒0 |
大盾のゴレムガー | 365 | 9勝3敗 勝利! | 【ウォール】2268⇒0 |
白の鳥姫シャラン | 221 | 4勝0敗 完勝! | 774⇒0 |
花売り少女ヤーユ | 214 | 4勝0敗 完勝! | 334⇒0 |
秘蹟の吟遊詩人チィゼッタ | 295 | 5勝0敗 完勝! | 1154⇒0 |
盾の奴隷王ディーダス | 377 | 9勝0敗 完勝! | 【ウォール】1642⇒0 |
ブレイクゲージ残量(第3ターン終了時点) |
---|
74367=74367 |