<世界革命阻止戦 第5ターン結果>
第5ターンの開始状況
●マスターデモン・ドゥンスト
「さあ、はじめよう、終わりの夜を。醒めない夢を!」
砂月楼閣シャルムーンの街を、絶望の闇が覆わんとしていた。
それをもたらす者の名は、マスターデモン・ドゥンスト。
彼が率いるデモンの軍勢は、人々が避難した場所を突き止めると、そこを真っ先に狙った。
守ろうとしていた城塞騎士達を容易く蹴散らし、しかし命だけは奪わずにおく。
「何のつもりだ……」
ドゥンストの攻め込んだ区画を守っていた城塞騎士団の若者へと歩み寄ると、その顔を覗き込む。若者は、その目の異様さにゾッとするものを感じた。
外見上は人間であるが、ドゥンストの人々を見る目は興味深い生物を観察する学者のそれだ。
「私が奏でるのは苦痛と悲鳴、そして絶望……」
眼鏡の向こうで、瞳が笑みの形に歪んだ。
それと同時に、若者の脚に穴が開く。
「っああっ……!!」
「治癒魔術でも使えばすぐに治るだろう。我慢したまえ。ほら、子供達が怯えるじゃぁないか」
悶絶していた若者は、自分を見つめる視線に気付く。
逃げ遅れ、怯える人々に自分達の状況を理解させる。
それこそが、ドゥンストの目的なのだと……。
「これから君に苦痛を与えよう。君が我慢できなくなったら、子供達をそうしよう」
そう言い放ち、デモン人間達に場を任せようとしたドゥンストの耳に喚声が届く。
「やはり、来たか……絶望を肥やすのは後回しにするかな」
人々から絶望を絞り出す作業を中断し、ドゥンストは戦闘態勢を整える。
戦場に現れたドゥンストがさながら楽団の指揮者が指揮棒を振るうかの如く、大きく手を振るう。彼の意志はすぐさま全軍に伝達され、デモン達はたちどころに動き始めた。
「戦場に満ちたる思い、想い……その全てを糧にして、燦然たる光をこの地に光臨させようじゃあないか!」
夢見るように、ドゥンストは宣言する。
邪悪と見られる行いも、その全ては燦然天使ゼルフォニア降臨のためである。
だが、彼を守っていたデモンが不意に消滅する。
それを為したのは、鎧に身を包んだ人影だ。
「何者だ?」
「香具屋五郎左衛門鈴重!覚えておきな!!」
スズシゲ(c25254)は力強くそう宣言すると、ドゥンストとの戦いに入る。
絶望を与えることに特化したマスターデモンではあるが、彼も弱兵ではない。
むしろマスターデモンとなったエンドブレイカーの中では、強者の部類に入るだろう。
「苦しみ、絶望したまえ。そうすれば、訪れる夜はより色濃いものとなるだろう」
人々に絶望を与えるという邪悪に染まらずして、世界革命は実現されない。
それでいて、邪悪を為したデモン達は世界革命の後にも残されることになる。それは世界革命の明確な矛盾であるのかも知れなかった。
「デモンの声なき声、エンドブレイカーの声……そこに私と君の声も加わるか! 良い旋律となりそうだ!」
「何をゴチャゴチャと……知り合いの友達らしいから、根は悪いやつじゃないんだろうけどねぇ……人々に絶望を与えようってのは、放っておけないさ!」
『龍』と『燕』と名付けられた二刀を振るっていく。ドゥンストを案ずる者達もいるのだろう。だが、その声が彼の元へと届くことは無かった。エンドブレイカーとデモン達、互いが傷ついていく中、ついにスズシゲが振り下ろした剣が、ドゥンストの体を断ち切る。
鈍い音が響き、血の代わりに真っ黒な闇を垂れ流すドゥンストの姿がエンドブレイカー達の目に映った。
「……こうなった以上は、覚悟の上……これもまた、僕の選択の結果、か……」
ドゥンストの体から力が抜けたかと思うと、細かな闇となって微塵に砕け散った。
「敵将、討ち取ったり!! さあ、次だ!!」
苦いものを抱えながら、スズシゲはそう宣言するのだった。
●マスターデモン・クトラ
デモン達を従えて、マスターデモン・クトラは、再び砂月楼閣シャルムーンに降り立っていた。
その身を覆うのは竜の如き鱗と夜を映し出す翼。
砂月楼閣シャルムーンの『世界の瞳』の扉を狙った時から変わらぬマスターデモン・クトラの姿は、相も変わらず、これまでに倒した五人の六勇者をも上回る強烈な力を保持し続けていることを示している。
「こちらは砂漠を越えて来たばかりなんだ。ゆっくりと休ませてくれても良いんじゃないかな」
大儀そうに言ってクトラは、翼を広げる。
そこから現れるのは、大量のデモン達だ。
続々と現れていくデモンの姿に、エンドブレイカー達は緊張を滲ませる。
彼を守らんとするかのように、大量のデモンの軍勢はエンドブレイカー達との戦闘を開始していた。以前に砂月楼閣シャルムーンで交戦した勇者の軍勢には及ばずとも、大軍勢と呼ぶにふさわしい数であった。
「とはいえヴィネまでやられた以上、僕も覚悟を決める必要がありそうだね」
「随分と往生際が良いんだな」
「マスターデモンやデモン達の個々の力は、君達を上回っている……。ここまで君達を通した時点で、見込み違いがあったということだろう。それに、僕が倒れても代わりはいるさ」
突き放すような物言いで、クトラは状況を俯瞰する。
「だからって、それで自分が死んでも構わないっていうわけ……冗談じゃない!!」
だが、怒りの言葉が、その鉄面皮へと叩きつけられた。
その叫びを発したのは、平穏無事とはいかないけれど・シャティニュエール(c36173)だ。
水着姿の彼女に、クトラは平静な表情で言った。
「そろそろその格好は涼しくないか」
「アンタに言われたくはない……ってそんなことはどうでもいいでしょう!!」
シャティニュエールは、バトルガントレットに包まれた指先をクトラへ突きつける。
「クトラ、アンタを取り戻しに来た!」
「僕を……? 失礼だけど、誰だったかな」
「ああ、初対面だ、それがどうした!」
シャティニュエールの拳が、クトラへと繰り出された。
大したことのない一撃だと、マスターデモン・クトラはそれを背の翼で受け止めようとする。
だが、その動きは途中で不自然な形で制止した。
シャティニュエールの鉄の拳が、クトラへと突き刺さる。
「痛い? でも、それはデモンの事件で苦しんだ人達の……そして、アンタを心配する人達の心の痛みだ!!」
続けざまに、左右の拳を叩き込んでいく。
周囲にいたデモン達がクトラを守らんとするが、他のエンドブレイカー達がそれを許さない。
いつの間にか、クトラを説得しようとする者達を守ろうとするかのように、クトラの周囲には空間が出来ていた。
シャティニュエールが拳の振るいと共に言葉を続ける。
「アンタはアタシの友達の友達なんだ……【サティスファクション】のみんなが待ってるんだ!」
「く……!」
六勇者を上回る力を持ちながら、クトラはエンドブレイカー達に完全に追い込まれていた。
攻撃は完全な力を発揮できず、彼は
「帰って来なさい、クトラ!!」
シャティニュエールの拳がクトラを貫く。
そして、クトラの瞳がシャティニュエールを捉える。
「……逃げるんだ」
「正気に戻ったの?」
クトラは苦しげな息の元で言葉を続けた。
「今だけだ。僕が倒れれば、『異界門』が暴走する……制御して、時間は引き伸ばすから……」
「はいはい、それは防がせてもらいますよ、っと!!」
飛び込んできたのは、三歩下往く・オデット(c33077)である。
その手にするのは、魔鍵『バルムントの鍵』。
その先端が、マスターデモン・クトラへと向けられる。
『此華咲夜若津姫』の武具の一つである魔鍵は、水に沈んでいくかのようにクトラの体へ深々と突き刺さった。
「……うわ、なんですかコレ……」
バルムントの鍵を通じ、オデットは感じ取る。
クトラの細胞の一片に至るまで染み渡り融合した、複数のマスターデモン達。
それらが、クトラの肉体を動かしているのだと。
「マスターメイガスを操ってたマスターデモンと、同じ原理ですかね多分。……怖い怖い」
ジェスターによって異界へと運ばれたクトラは、体内に膨大な量のデモンを注ぎ込まれ、そして融合された。
常人ならば肉体の崩壊を招いたであろう融合は、しかしクトラの強力なデモニスタとしての才覚と、エンドブレイカーとしての力による死の終焉の破壊によって実現され、クトラの肉体に、マスターデモンとしての力を与えていた。
だが、オデットは肉体の隅々にまで浸透していたデモンの全てが、揺らいでいるのを感じ取る。
クトラの意志が、デモン達に抵抗を見せているのだ。
それはエンドブレイカー達の説得によるものに他ならなかっただろう。
「これなら……!」
『バルムントの鍵』に魔力を注ぎ込みながら、オデットが鍵を捻る。
強烈な魔力が迸る。
戦場にいたエンドブレイカー達の全てが、扉が閉まる音を聞く。
そしてオデットの前で眠りについたクトラの体からは、マスターデモンであった痕跡はきれいさっぱりなくなっていた。
「まあ、目が覚めたら大変でしょうけど……」
マスターデモンとなって以降はともかく、それ以前は完全に彼に帰するところである。
それを取り返せるか否かは、クトラ自身にかかっているのだろう
●終戦
「『世界革命』と言う名で大仰に飾ろうが、君の行為は欲望のままに動くマスカレイドと何ら変わらない……いい加減に目を醒ませ!」
クウィル(c03503)の繰り出した輝ける刃が、マスターデモン・アイシアを撃ち貫いた。
崩れ落ちたアイシアの体から、闇が抜け出ていく。封印鍵の契約者・アイシア(c00666)は、その赤い目をクウィルへと向けた。
「……あの……どうなったんですか? マスターデモン・クトラは封印されたんですか?」
「どういうことだ? 君は自分の意志でマスターデモンになったのではなかったのか?」
「クトラを倒して封印するために、マスターデモンの力を求めたんですが……」
同じような裏切りを考えていたのが彼女と承認者・イヴン(c27456)、それに橙赤の若主・チロ(c00310)の3人しかいなかったため、あっさりと他のマスターデモンに倒され、支配下に置かれていたらしい。
同じくクトラが弱ったら反逆してやろうと目論んでいたフラムは先鋒に配置され、エンドブレイカーとの戦いで消滅していることを思えば、3人は不幸中の幸いだったというべきだろう。
そのイヴンやチロもまた、封印を免れていた。
他にも、同じ戦場にいたエンドブレイカー達によって説得されたマスターデモンの中には、元の状態に戻ったものもいる。
だが、マスターデモンとなり、世界革命を目指した多くのエンドブレイカー達は消滅を免れなかった。
生き残ったマスターデモン達も、クトラの中にあった異界門の封印と共に消滅していた。
おそらく、デモン達だけが存在する異界に封印されたのだろうと、マスターデモンであった者達は語った。
デモン達は残ったが、マスターデモンによる支配は失われている。
これまでのような集団行動は、もはや不可能だろう。
かくして、デモンとの戦いは終結を迎える。
戦いを終えた砂月楼閣シャルムーンに、日は沈もうとしていた。
あなたの戦闘結果(FLASH版/HTML版)
戦場(リンク) | 参加者 | 結果 | 棘(ソーン) |
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マスターデモン・クトラ | 1538 | 23勝7敗 勝利! | 【マスターデモン防衛陣】【異界門】【エンドブレイカー】【巨人の援護】7350⇒0 |
マスターデモン・アルト | 99 | 0勝10敗 敗北 | 【エンドブレイカー】【巨人の援護】2058⇒2034 |
マスターデモン・イルミ | 255 | 2勝6敗 敗北 | 【傲慢】【エンドブレイカー】【巨人の援護】1697⇒723 |
マスターデモン・ドゥンスト | 424 | 5勝3敗 勝利! | 【絶望】【エンドブレイカー】【巨人の援護】2205⇒0 |
マスターデモン・ヴァープラーグ | 63 | 0勝7敗 敗北 | 【エンドブレイカー】【巨人の援護】1852⇒1847 |
マスターデモン・クロムラント | 75 | 0勝6敗 敗北 | 【エンドブレイカー】【巨人の援護】1867⇒1867 |
マスターデモン・アリュース | 193 | 0勝7敗 敗北 | 【エンドブレイカー】【巨人の援護】1985⇒1644 |
ブレイクゲージ残量(第5ターン終了時点) |
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46159−1017−361−923−933−822=42103 |
ターン終了時能力 |
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【巨人の援護】! ブレイクダメージ2034⇒1017 【巨人の援護】! ブレイクダメージ723⇒361 【巨人の援護】! ブレイクダメージ1847⇒923 【巨人の援護】! ブレイクダメージ1867⇒933 【巨人の援護】! ブレイクダメージ1644⇒822 |