<エルフヘイムの戦い 第5ターン結果>
第5ターンの開始状況
●ジョルジュ仮面さま:Battle14
エンドブレイカー達に押され、沼地の魔女の軍勢は明白な劣勢に陥っていた。
だが、魔女の城の尖塔にまで追い込まれた軍勢に動揺の色は無い。
軍勢の残りは、軍の主たるチャイムを除けばアンデッドとイマージュばかりだったからだ。そのイマージュの中でも最強の存在は、チャイムのいる場所へと通じる通路でエンドブレイカー達を待ち受けていた。
「退いてはいけない!」
凛としたその声は、城の入り口を巡る攻防の喧騒を貫いて涼やかに響いた。
声の主は、白馬にまたがった一人の少年、ジョルジュ仮面『さま』のものだ。
王冠を被ったタイツ姿で、少年は気品のある仕草で細剣を構えてみせる。
「退きたまえ。君達のような悪漢どもであっても、この城を去るならば見逃してやろう!」
「……自分が不利だというのに、全く気にしてないな」
「君達がいかに強くても、僕は勝つ……何故なら、僕は愛によって立っているからだ!」
ひたすらに頑なである。
妄想から生まれたイマージュの恐ろしさだった。
正々堂々と言い放ち、ジョルジュ仮面は馬を一蹴りする。
馬に乗っているのだから二倍のダメージでも受けそうなものだが、そういった事情は完全に無視されているらしい。ムーングース・ジェリー(c04906)がよく見ると、馬の鞍と王子の腰部分は一体化していた。
「これも妄想のせいか……」
長年考えていたという割には適当過ぎる設定にジェリーは舌打ちした。だが、それを聞きとがめてジョルジュ仮面の怒りが迸る。
「否! 我が姫への愛は現実!」
ジョルジュ仮面の剣が一閃された。
どう考えても馬の下にいる相手に剣など届かないだろうと思われたが、チャイムの魔力と活性化された棘(ソーン)は、彼の剣にご都合主義という名の加護を与え、その不可能を可能にした。
『怒り』を意味する文字が、剣閃と一緒に伸びて行く。
「喰らうがいい、我が怒りの剣を!」
「どんな設定だ」
「暁の光の元、我が剣の錆となって命の華を散らすがいい!」
「今は昼間だ」
極光の輝きを帯びて伸びる剣。だが、その間にもジョルジュ仮面さまへとエンドブレイカー達の攻撃は集中する。それを剣を振るってしのいでいた彼にも、ついに限界は訪れた。
振り下ろされた剣をジェリーは転がるようにして避けると、斧を投げつける。
弧を描いて戻って来た斧が馬をかすめ、王子はついに馬から転がり落ちた。
落馬した王子は存在意義を維持できる、ゆっくりと姿を消していく。
「とんでもない奴だったな……」
あれだけのイマージュを生み出す才能と魔力。チャイムがあのまま長じれば、ヴィオラを越える魔女になっていたのかもしれない。
「まあ、それも終わりだ」
階段の先を見上げ、ジェリーはそう呟いた。
●沼地の魔女チャイム:Battle15
城の玉座の間は、エンドブレイカー達の知らない間に華やかに改装されていた。
暗鬱な雰囲気はまるでなく、少女趣味なピンク色が壁や天井を彩る。
その有様は、城主の精神性を物語っているかのようだ。
だが、その室内の統一性を大きく損じているのは、部屋の扉であった。
つい先ほど攻め寄せたエンドブレイカー達を撃退した代償である。
そして問題の城主、沼地の魔女チャイムはといえば、
「つまんなーい!!」
玉座に腰かけたまま、バタバタと不満げに足で床を叩いていた。
半透明のマスカレイドの仮面の向こうから、ジト目の視線がエンドブレイカー達を撫でる。先程の戦闘の後で着替えたのだろう、服は完全なものに戻っていた。
果物やお菓子の盛られた皿を掲げた無数の『王子様』にかしずかれながらも、配下の者達の戦果にはご不満のようだ。
「もう! 悪者は、王子様とかヒーローとかにやられて死ぬものだっていうのがお約束っていうのを知らないんですか?」
「誰が悪者だ」
「あなた達に決まってるじゃないですか!」
腰に吊るされた二振りの剣を引き抜いた。剣が引き抜かれる時に、音と共に小さな星が散る。
その星が床に落ちると共に、周囲にいた「王子様」達が一斉にマントを翻した。
波を思わせるマントの揺れが収まった時には、チャイムも周囲のマスカレイド達も、完全に戦闘の態勢に入っていた。
「今度こそ二度と来る気が起きないようにギッタンギッタンにしてあげるんだから♪」
チャイムが剣を振るたびに、ファンシーな星だの飴だのが乱舞する。
それらは全て、チャイムの魔力がこもった爆弾だ。
アビリティに付随するそれらは、奇妙な魔力でこちらに打撃を与えて来る。
もっとも、ギリギリのところで持ちこたえていたチャイムの抵抗は、ほどなくして力ないものへと変わっていく。周囲にいた王子様も悉く倒され、孤軍奮闘する彼女の力も、次第に衰えて行った。
「あ、あれれ? おかしいですよ? 私は……」
「現実を見れなかったのが、お前の過ちだ」
気の毒に思いながらも、弓の狩猟者・シルヴィア(c01877)はファルコンスピリットに攻撃の命令を下す。
「や、やだ、え、なんで!?」
急降下を繰り返したスピリットがシルヴィアの元へと戻って来た時、沼地の魔女となった少女は、その動きを止めていた。
●スフィクス家長老:Battle83
エルフヘイムの上層、都市を一望できる場所に、その巨体は姿を現していた。
漆黒の金属装甲に身を包んだ、三つ首の大巨人。
身長に合わせてあつらえられた大鎌と、同じく長大な金属の盾を携えている。
その巨人こそが、処刑を司る≪戒律≫の要、『スフィクス家』を影から支配していた存在であり、このエルフヘイムに絶望のエンディングをもたらそうとしていた存在だったなどとは、事情を知らぬ者には想像すらできなかったであろう。
だが今、スフィクス家長老の装甲には無数の傷が走り、肩で大きく息をついてさえいた。
数百年を陰謀に費やした男は、追い込まれつつあったのだ。
巨人の三つ首が声を放つ。
「数百年間、待ち続けた」
「間もなく、我らの大願が成就する」
「我が密告者となる時は、すぐそこだ」
「「「だというのに!!」」」
憤怒の色が声に宿った。巨人の視線の先にあるのは、エンドブレイカー達の姿。
エルフヘイムの人々を守るため、陰謀に抗い激戦を勝ち抜いてきた勇敢なる戦士達の姿だった。
「「「何故貴様らは諦めぬ!」」」
「それは簡単な事です」
ミストバトラー・ヴァルナス(c17802)は、仲間達を星霊スピカで癒しながら静かに答える。
「悲劇のエンディングを打ち破るのは、俺達エンドブレイカーの使命だからでございます」
スフィクス家との最後の戦いを、エンドブレイカー達は制しつつあった。
長年に渡って、決戦のために密かに磨き上げられて来たスフィクス家の最精鋭部隊。
だが、その軍勢は、いまや打ち破られつつあった。
苦渋に満ちた声音で、長老は大鎌を振り上げる。
「認めぬぞ……数百年をかけた我が夢を、壊させはせぬ!」
「そういうのは夢じゃねぇ! 野望っていうんだよ!」
「貴方の野望が人々に犠牲を強いるなら! そのエンディングを破壊するのが、私達だ!」
エンドブレイカー達の声に、歯噛みするように長老は呻いた。
「おのれェェェ……!!」
軍勢の残ったマスカレイドと共に、大鎌を振り回して荒れ狂うスフィクス家長老。
だが、それに対してエンドブレイカー達は怯むことなく立ち向かった。鎌の刃で切り裂かれ、薙ぎ払われながらも一撃を加える。
血に染まる戦場で、エンドブレイカー達の目はその先にある勝利を見つめていた。
「大丈夫です、まだわたくし達に勝機はあります……! 信じて向かいましょう、その先に光はあるのでございます」
彼と行動を共にしてきた【≪Steward's base≫羊と共に去りぬ】の仲間達が頷く。そして、エンドブレイカー達は一斉に攻撃を繰り出していった。一つ一つの攻撃が長老の戦闘能力を着実に奪い、巨体を跪かせるに至る。
「今です!」
ヴァルナスの星霊ヒュプノスが長老に飛び掛かり、その兜の内側へと潜り込んだ。
眠りをもたらす星霊が3つの兜を次々と跳び渡るにつれて、長老の動きも鈍くなっていく。
「お、のれ……エンドブレイカー……」
黒色の鎧が崩れ落ちる、三つの首が砕け散った。
後に残るのは、鎧の残骸だけだ。
スフィクス家最強のマスカレイドが、滅びた瞬間であった。
●有資格者
スフィクス家長老が倒れた事は、すぐに別の場所にいた妖精騎士伯ウェンディにも伝わった。
彼女は自分を縛り付けていたものの一つが消えた事実を、情報でなく感覚で理解する。
だが、それはウェンディにとって、さらに望まぬ事態への入り口でもあった。
エンドブレイカー達を撃退したウェンディは、感情の動きを感じさせない声で部下達に告げる。
「スフィクス家長老が討たれました。
エンドブレイカーに対抗するための次善策として、私が、『密告者』を目指します」
あなたの戦闘結果(FLASH版/HTML版)
戦場(リンク) | 参加者 | 結果 | 棘(ソーン) |
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妖精騎士伯ウェンディ | 1032 | 0勝78敗 敗北 | 【拒絶体】3759⇒2848 |
スフィクス家長老 | 2673 | 82勝1敗 勝利! | 3996⇒0 |
ジョルジュ仮面さま | 729 | 14勝0敗 完勝! | 463⇒0 |
沼地の魔女チャイム | 785 | 15勝0敗 完勝! | 134⇒0 |
ブレイクゲージ残量(第5ターン終了時点) |
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38443−2848=35595 |