<オープニング>
資産家ノビーノは、様々な植物を収集するコレクターであった。彼の温室には珍しい花々が咲き乱れ、中には数千ダルクもするというものまであったらしい。
その温室から、『踊る胡蝶』と呼ばれる美しい花が盗み出されたのだ。
「あぁ、なんていうことだろう。これ以上の不幸があるだろうか。絶対に犯人を捕まえて、取り戻して下さい!」
涙ながらに訴えるノビーノ。
なんでも、この花は、ノビーノが自分の娘のように可愛がっていた花であるらしい。
この事件の容疑者は……。
(1)庭師オーレンジャイロ
ノビーノの信頼厚い温室の庭師のオーレンジャイロ(72才)。
高齢の為、実際の作業は若い者に任せていたが、その広範な知識と卓越した技術は、庭師の中の庭師であると認められていた。
本人も、まだまだ若い者には負けないと言い張っているが、よぼよぼなのは間違い無い。
最近、近所の老人会で、
「数千ダルクあれば、若返りの薬が買える」
という噂を聞いて、若返る事ができるなら数千ダルクだって用意してやると言っていたとかいないとか。
(2)庭師見習いジョン
オーレンジャイロの弟子のジョン(20才)。
若いだけが取り柄の庭師見習い。
本人は、名人の弟子になったのだから、そのうち自分も名人になれるだろうと考えているらしい。
「未来の名人である僕が、たかが数千ダルクの花で未来を棒にふるわけないじゃないですか!」
とは言うが、ジョンが名人になれる可能性は、まぁ無いだろうと誰もが思っていたらしく、本人も、もしかしたら気づいているかもしれない。
(3)温室職人カブット
ノビーノの温室の設計と組み立てを行った温室職人カブット(45才)。
腕の良い職人だったが、賭け事にはまり、身を持ち崩した。
借金の総額が数千ダルクにも達しているという噂もある。
温室を作って以降ノビーノとは交流は無いが、ノビーノ家の温室を作ったのは12年前だが、温室の構造を全て知っている彼ならば、気づかれないように温室に忍び込んで花を盗むことは難しくないだろう。
(4)マダムエクセレントフラワー
ノビーノのライバルでもある、有閑マダム(33才)。
本名は秘密。
ノビーノが手に入れた『踊る胡蝶』をどうしても手に入れたいと、何度もノビーノに頼みに来ていたらしい。
盗難があった前日にもノビーノ家を訪れていたらしく、その時、思いあまって盗み出したという可能性は0では無い。
(5)令嬢メロディ
ノビーノの実の娘のメロディ(14才)。
花にしか興味の無い父親を嫌っており、父親の花の中でも『踊る胡蝶』については、特に嫌っていた。
実の娘がいるというのに『自分の娘のように可愛がっていた花』とか言われれば、怒るのも当たり前かもしれない。
彼女が犯人であれば、『踊る胡蝶』はすでに棄てられてゴミになっていることだろう。
さて、この事件の、驚きの真犯人は?