■リヴァイアサン大祭『〜 雪の降る日の贈り物 〜』
夜は大祭の名残を残しながら静かに更けていく。飾られたツリー。灯る暖炉。女の子らしい淡く暖かな色味で彩られた部屋。窓によって切り取られた雪景色に寒さは無く、ただただ美しくこの日を演出する。
まるで幸せの象徴のような部屋で、アンゼリカとグラッセは幸福の絶頂に居た。
「すごいすごい、可愛いー」
色とりどりに包装されたたくさんのギフトボックス。アンゼリカが開けた大きな箱から現れたのは、大きなくまのぬいぐるみ。2人の為に贈られたお揃いのぬいぐるみ。アンゼリカは嬉しそうに両親から贈られたプレゼントを見つめている。
両親から届けられたのは、2人の誕生日プレゼントだった。配達の都合で誕生日に間に合わなかったが、大祭の日に届いた事で嬉しさが2倍に感じられた。
「ね、ラセちゃんはどっちのぬいぐるみにする?」
アンゼリカは嬉しくて仕方ないといった表情で、2体のくまを見比べながらグラッセに問いかけた。グラッセもまた、
「可愛い、ね。すごくすてき……!」
と、大人しいながらも弾んだ声でプレゼントを見つめている。
「んと、こっちのお人形貰って、いい?」
グラッセの髪と同じ色のリボンをしたくまを選び、答える。アンゼリカが笑顔で頷くと、グラッセは満面の笑みで自分の物となったくまをぎゅっと抱き締めた。
「この子達が一緒なら、寝る時も寂しくないね」
微笑みながら言うと、アンゼリカは同封されていたメッセージカードに手を伸ばした。頷いているグラッセに、お父様とお母様からのメッセージ、読むねと告げて封を開く。
『お誕生日おめでとう、素敵なレディになった姿を見たいな』
目に入れても痛くない娘達と直接会えない日々に、募る思いを溢れさせたかのような手紙は、「頑張っている?」「会えなくて寂しいな」等と続く。
「……もう、お父様ったら寂しがり屋さんなんだもんー」
普段から手紙のやり取りしてるのにと、嬉しそうに苦笑しながら呟くアンゼリカ。そんな彼女を見てグラッセもくすくす笑っている。
「アンジュちゃんはお父様が大好き、だね」
グラッセにそういわれ、少し照れたように頷くアンゼリカ。相変わらず幸せそうな2人だが、グラッセの表情がほんの少しだけ曇った。
「お父様からのメッセージ聞いてたら、わたしもなんだかちょっぴり寂しくなっちゃった、な。お父様とお母様に会いたいな……」
くまを抱き締めながら少し寂しそうにしているグラッセに、今度会いに帰ろうねとアンゼリカは優しく微笑みかけた。
「これよりももっとずっと、素敵なプレゼント選んじゃうもん」
元気に宣言するアンゼリカに、グラッセも表情を輝かせて大きく頷いた。
静かな闇と冷たい雪の中。姉妹の部屋の窓から漏れる明かりは、どこまでも明るく、暖かかった。
姉妹の両親の想いに守られているかのように。