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ふたりのリヴァイアサン大祭

朱金の暁光・ルグス
蒼銀の夜海・アリアン

■リヴァイアサン大祭『ふたりのぬくもり』

 舞踏会を終え、外へと出ると冷気が2人を包み込んだ。リヴァイアサン大祭が終わりに差しかかってはいるものの、雪はまだしんしんと降り続いているようである。
「外は寒いな……」
 ルグスはそう呟くと軽く身震いをした。吐く息も白い。
「リア、冷えるだろ。ほら、これ」
 彼女の肩出しドレスに気が付き、寒いだろうと己のコートを差しだす。
「え……いいわよ、大丈夫だから」
 アリアンは彼の優しさに感謝を覚えるも、軽く身を引く。最近はルグスことルーに助けて貰ったり、甘えてばっかりいる、そんなに甘え続ける訳にもいかない。
「私は平気よ」
「いや、平気じゃないだろ。明らかに寒そうにしてるじゃないか」
 彼女が軽く手を擦ったのを、ルグスは見逃さなかった。だが、再びコートを差し出すも、アリアンは首を縦に振ろうとはしない。
「だからって、それでルーが風邪引いたら元も子もないでしょう?」
「オレはジャケットも着てるし、大丈夫だから!」
「でも……」
「あー、もう!」
 ついにルグスが折れたのだろうか、コートを羽織るとアリアンの肩へと手をかけた。
「だったら、これなら文句ないだろ!」
「そう、それでいいのよ……って、どうして私、ルーのコートの中に居るのかしら?」
 そう、彼はコートを着たかと思えば、ぐいと彼女をコートの中へと引き入れたのである。
「これなら2人とも寒くない」
 言ってニカッと笑うルグスにアリアンも、ふと考える。
「……そうね、確かに、これならどっちも風邪をひかないし暖かいわよね。じゃあこれで帰りましょう」
 くっついた方がお互い暖かいのならば、その方が良い。
(「明日からはちゃんとするから、今日だけは甘えようかな……」)
 そんな事を思いながらアリアンはそっとルグスへと寄り添う。
「……暖かいわね」
「ああ」
 答えると、ルグスはふいと目線を泳がした。
 彼女の体温がとても温かい。だが、その温もりが何だか気恥しくなり、彼女の顔を直視できずにいる。そして何より温かいのは、心。彼女がやっと大人しく甘えてくれた嬉しさに、気持ちまで温かくなった気がした。
(「毎度毎度、このお姫様は素直に頼ってくれないから、もっと甘えてくれると良いんだけどな」)
 お互いの温もりを感じながら、2人は静かに帰路につくのであった。
イラストレーター名:kokuzu