ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

暁のアルフェッカ・ティルティアラ
サニー・デイ

■リヴァイアサン大祭『うれしい、たのしいを君と。』

 優しく光る街灯の下、デイは一人佇んでいた。待ち人は、まだ現れていない。というより、デイが少しばかり早く到着しているのだ。
(「女の子を待たせるわけにはいかないもんね」)
 心の中で紳士的にそう呟いて、手袋をしてもなお寒い手に、はあっと息を吹きかけた。実年齢よりも大人びた顔立ちと相俟って、街灯の下で立つ姿は様になっている。
 が、その内心は大人びた、という言葉からはかけ離れたもの。実際は、そわそわと浮き足立ちそうな心を必死で抑えている。
 今日は彼にとって、大切な日。淡い恋心を抱いている女の子、ティアラとの初デートの日なのである。
 デイとティアラは、普段から仲がいい友達同士ではあるが、こうやって二人きりでデートをするのは、実は今日が初めてだ。いつもはデイの愛犬ハナも一緒にいるのだが、今日はお留守番をしてもらっている。いるはずのハナがいないというのが、より緊張を誘うのかもしれない。だが、緊張のドキドキよりも、楽しみのドキドキの方が大きい。
「今日は特別な日、楽しい一日にしよう!」
 約束の刻限まで、あともう少し。ティアラの笑顔を思い浮かべながらそう呟くと、デイは空を仰いで深呼吸した。

 その頃ティアラは、ぱたぱたと小走りに街を駆けていた。
 本当はもっと早くに家を出ているはずだったのだが、どの洋服で行こうか試行錯誤しているうちに時間がギリギリになってしまったのだ。悩みに悩んで決めた服は、女の子らしいワンピースに、ニットのもこもこケープ。全体的に、ふわりとした印象に統一してみた。
 悩みに悩んで決めた服だが、それでもこれでよかったかな、というドキドキは拭えない。
 駆けていく途中で目に止まったショーウィンドウの前で急停止して、それを覗き込んだ。待ち合わせ場所まであともう少し。あの角を曲がればすぐだ。
 デイに会う前に身嗜みの最終チェックをしておかなくちゃ、と髪をいじり、ぐるりと一回転して全身を確認する。
「少しでも、可愛いって思ってもらえるといいなあ」
 ショーウィンドウに映る自分をしばし眺め、デイに思いを馳せていたティアラだったが、約束の時間が迫っていることをはっと思い出して、慌ててまた駆け出す。

 角を曲がった瞬間に、ティアラの目に飛び込んできたのは、街灯の下で待つデイだった。 
「デイくん!」
 無邪気な笑顔で駆け寄ってきたティアラを迎え、デイは心がほっこりと暖かくなる気がして、ふわりと相好を崩す。大人びた外見だが、笑った顔は年相応だ。
「ティアラ。急がなくても、大丈夫だよ」
「お、お待たせ〜っ! ごめんね、待った?」
「ううん、俺も、今来たとこだから! じゃあ、いこっか!」
 デイがにっこり笑って手を差し伸べると、ティアラは幸せそうな満面の笑みをその顔に浮かべて、デイの手を強く握り締める。ハナには悪いけど、思いっきり二人で楽しもう、とデイは思って、ティアラの手をぎゅっと優しく握り返した。
イラストレーター名:三堂 泉