■リヴァイアサン大祭『最初のクリスマス』
年に一度、星霊リヴァイアサンが半実体化して空を舞い、エルフ達がパートナーと共に世界の平和を祈る、この日。リヴァイアサンの影響によって、雪が降り積もるエルフヘイムの街を、リーゼロッテとリーリアは二人で歩いていた。
たくさんのエルフ達がパートナーと楽しそうに語り合いながら道を行き交い、時には人間のカップルが仲睦まじく過ごす姿が、それに混ざる。
リーゼロッテとリーリアは、祭りの装飾が施された賑やかな街を歩き、今日だけのバザールの数々を覗きつつ、さて、と顔を見合わせた。
「んー、楽しかったなぁ。次はどこがええやろ?」
「あっちの森の方で、素敵な景色が見れるらしいですよー。さっきの屋台の人に聞いたんですー」
にこにこと笑うリーリアに、ならそうしよかーと歩き出すリーゼロッテ。ハニーバザールで買ったお菓子を片手に、何気ない会話で盛り上がりつつ、歩くうちに周囲の人影は徐々に少なくなっていく。
お菓子をすっかり食べきって、目的の場所へ着いた時、周囲には誰の姿も見当たらなかった。
木々には不思議な光が灯り、周囲にはろうそくの無数の炎がゆらゆらと揺らめき、それを暖かく包み込む。
「綺麗やな……」
「はい、とっても」
リーゼロッテとリーリアは、思わず目を細めて口元に笑みを浮かべつつ、その景色を見つめた。二人並んで感嘆の溜息をついて、静かに景色を楽しむ。
賑やかな街で、二人でのデートを楽しむのもいいけれど……。こんな風に、ロマンティックな雰囲気に包まれて、静かに二人だけの時間をかみ締めるのも、いいものだ。
「……リーリア」
「はい?」
不意に、リーゼロッテは隣のリーリアを見つめる。きょとんと首をかしげた彼女に、リーゼロッテは微笑んで。
そっと、両手の指先を絡めると、彼女の唇にキスをする。
「わ……わわわっ……」
受け入れたリーリアは、でも唇が離れていくと、急に真っ赤になって周囲を見回す。
「だ、誰か見ていたらっ……いませんけど……」
嫌なわけじゃないし、むしろ嬉しいくらいだけど、でも外でキスはちょっと恥ずかしいとごにょごにょ呟いて抗議するリーリアに、リーゼロッテはくすっと笑って「ごめん」と謝る。
「でも……な?」
だって好きだし、すごく好きだし、それに……今は二人だけしかいないから。
「リーゼロッテさんたら、仕方ないですねー」
指先を絡めて両手を繋いだまま、くすくす笑うリーリア。そのリーリアを見つめてリーゼロッテも笑う。
二人は、そうして見つめあって……。
互いの気持ちを確かめ合いながら、しばしこの場所で二人だけのひとときを楽しむのだった。