■リヴァイアサン大祭『初めての時間』
それは、リヴァイアサン大祭の日の出来事。一組の男女のお話。男女は初めて味合う暖かさと温もりと、そしてくすぐったさを感じていた。
場所は女性の家の中。柔らかなソファに二人で腰掛けて、料理を食し、暖かな飲み物を飲みながら、一時の幸せを感じていた。
「これから……俺達はどうなるんだろうな」
互いに肩を寄せ合ったまま、男が――ウセルが女に語りかける。肩に廻した手で、女の柔らかな黒髪にそっと触れながら。
女――キウは、ウセルの肩に頭を乗せて、静かに掌の温もりを受け入れる。
暖かな感触。飲んでいた飲み物よりも、更に暖かい。体感の問題ではなく、心の問題で――内側から暖めてくれる、そんな温もり。恥ずかしさもあるけれど、それ以上の嬉しさが、キウの中にある。護ってくれる、護ろうとしてくれる。言葉が無くても伝わってくる、そんな温もりだから。
「どうなるんだろうね……ちょっと不安もあるかな?」
ウセルの肩に寄り掛かりながら、キウは心中を吐露する。二人はエンドブレイカー。戦いはこれからも続き、傷つく事だってある。今日のリヴァイアサン大祭も、来年あるとは限らない。未来は分からない。悲劇を壊す彼等とて、まだ何も分からない。
キウは不安に思う――だけど、だからこそ。
「ねぇ……春が来ても、夏が来ても一緒に過ごしてくれる? 私の傍に居てくれる?」
分からないからこそ願う。不安だからこそ大切に想う。今一番傍に在る温もりを。
隣に居る、愛しい人を。
「ああ、いいとも。来年も再来年もずっと一緒に過ごそう。キウの傍で、俺は過ごそう」
ウセルもキウの不安が分かるからこそ、そう誓うのだ。幸せは願うだけでは手に入らない。願い、そして手を伸ばさない限り、その掌には収まらない。今日この日に生まれた、この初めての関係をずっと続ける為に、ウセルはそう誓ったのだ。
ウセルの誓いを聞き、キウの顔が綻ぶ。花開くような、喜びの笑顔。
「私の事、好きになってくれてありがとう。私に告白してくれてありがとう。私には勿体無いくらいだよ。勿体無いくらいに……凄く幸せ」
「俺こそ……キウと一緒に入れてこんなに嬉しいことはない。大好きだぞ。キウの事、離したりしない」
「……うん」
そうして、二人は再び身を寄せ合う。テーブルに置かれたキャンドルが、二人の姿を照らす。これから先の幸せを想い、願い、約束した二人を、明るく照らす。男は女を護るように優しく肩を抱き、女は男を信じるようにその身に寄り掛かる。愛情と信頼が形となった、男女の姿。
それが、リヴァイアサン大祭の日の出来事。一組の男女のお話。
ウセルとキウが新しい関係で語り合った――初めての時間。