■リヴァイアサン大祭『姉妹でのんびり』
大切な日。大切なパートナーと過ごす日。
それならば、とフェリスは思う。
大切な妹のルミナと一緒に、のんびり過ごすのもいいんじゃないのかな、と。
それがいい、とルミナは答える。
大好きな姉のフェリスと一緒に、のんびり過ごすのはいいよね、と。
赤々と燃える暖炉のある部屋で、ラグを敷いてゆったり座れば、静かな時間はルミナの眠りを誘ったようだ。
暖炉で薪が爆ぜる音、ルミナの寝息。
フェリスは安らかな寝顔でむにゃむにゃ寝言を言う妹に膝枕をしてやりながら、その柔らかな髪を撫でてやっていた。
炎の照り返しでルミナの頬は美味しそうな果実のように色付いて見え、髪もふんわり蜂蜜みたいな色に見える。
白いドレスを着たルミナは大好きな姉の傍で安心しきって眠っていて、穏やかな幸せを夢見ているのだろう、うっすら微笑を浮かべている。
エルフ達が大切なパートナーと絆を確かめ合う日に倣って、改めて姉妹でこうして過ごしていると、様々な思いが込み上げてくる。
今日は楽しかったかしら。
どんな夢を見ているのかしら。
フェリスがそんなことを考えながらさらさらとしたルミナの髪の滑らかさを指先で感じていると、ふと妹が何事が呟いた。
「……お姉ちゃんのケーキ……」
髪を撫でていたフェリスの手が止まる。
耳を澄ましてみると。
「おいしいねー……」
フェリスも幸せな気持ちになる。
夜空の色に似たドレスの、たっぷり布を使ったスカートに顔を埋めているルミナの顔を覗き込み、静かに唇を開いた。
「よく寝てるね」
この可愛らしい子と、こんなにも静かな時間を共有できることの幸せを噛み締めながら、二人で過ごしたリヴァイアサン大祭の日を思い返す。
まだ、空には星霊リヴァイアサンが舞い、雪が降っているだろうか。
外はきっと寒い。
寒いからこそ、こうして互いの温もりを、存在を、そして命を確かめて静かに過ごすことが幸せ。
それはきっと、とても大切なことなのだ。
甘い蜜を舌で転がすような、甘やかで自然と笑みが零れるような、そんな時間は何ものにも替え難い。
「おやすみなさい、ルー。よい夢を」
フェリスの言葉は、ルミナの心に真雪のように舞い降りることだろう。