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ふたりのリヴァイアサン大祭

暁の騎士・アゼル
おなかをすかせた・エイデル

■リヴァイアサン大祭『星舞う夜の…』

 宵闇を彩るのは、光る雪蛍と舞い散る雪と。
 ランタンに願いを呟くと、思いの強さ次第で明滅しながら光り、天へ昇っていくという……そんな、夜。
(「雪も雪蛍も綺麗だけど、ずっと居ると流石に寒いかも……」)
 アゼルに寄り添いつつ、エイデルはそんなことを思う。
 エイデルは冷えた指先にそっと自らの吐息をかけた。
(「深々と……音も消えそうな夜などそうはないよね……」)
 エイデルの隣に立ちつつ、アゼルは空を見上げている。
 そんなアゼルをエイデルはちろりと見た。今も、彼は空を見上げたままだ。
(「いいかな? ……いいよね?」)
 エイデルは自分自身に少しばかり言い聞かせ、アゼルのコートの内側にこっそり入りこんだ。
 そんなエイデルの行動にアゼルは一瞬、目を丸くする。
 けれど、コートの端をきゅっと掴んで、照れたように微笑みかけるエイデルの様子に目を細め、受け入れた。
 エイデルが寒くないように、コートで包みこむ。
(「……なんて、私が暖まる為でもあるわけだけれど……」)
 二人でアゼルのコートの中で寄り添えば、互いの体温をただ隣に立つだけよりも近く感じた。
 じわりと広がるのは温もり。そして、言葉にしないままの感情のようだ。
(「――温かい」)
「あったかい……」
 アゼルがそう思ったのと、エイデルがそう言ったのはほぼ同時だった。
 エイデルはきゅうとくっつく。
(「……寒い日も、こんな風に居られるなら幸せ」)
 そう思いながら、猫がするように頬を擦り寄せた。
 アゼルはそんなエイデルを見下ろす。
 エイデルを抱き寄せるアゼルの腕の力がほんの少し、強くなった。見上げるエイデルとアゼルの視線とが絡まる。
 どちらからともなく、笑みを浮かべた。
 気温は冷え込んでいて、寒くて。……けれど、ここは温かい。
 二人で寄り添う今は、温かい。
 触れるだけのキスを交わした。
 触れた唇からも、互いの熱がじわりと広がる。
(「寄り添って過ごせるならこんな夜も悪くは無い」)
 寄り添う二人を祝福するように、淡い光を放つ雪蛍が空へ還ってゆく。
 二人の想いもまた、空に広がるようだった。
イラストレーター名:saw