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ふたりのリヴァイアサン大祭

閃光の双龍・ジローラモ
黒の継承者・アスワド

■リヴァイアサン大祭『冬の情景』

 雪の降る朝のこと。市場で買い物を済ませたあと、二人で旅団へと向かう。帰り道には、いつもの住宅街を選ぶ。静かで落ち着いていて……それに、今日はなんとなく、二人ともそんな気分だった。
「んっとに、静かだなぁ……でもって、寒ィ」
「雪が音を吸ってしまうからですかね。なんだか、ものすごく静かですよね……」
 手ぶらのジローラモは、紫煙を吐き出しながら呟く。両手に荷物を抱えたアスワドは、それに返事をしながら空を見上げた。
「それにしても……」
「ん? なんだよ」
 アスワドの呟きに、ジローラモが首を傾げた。アスワドはそちらを見る事もなく言葉をつむぐ。
「判ってはいるんですけど、よく降りますよね。ねぇ、ジローラモ。あんた、こんなに沢山雪が降るところ、見た事あります?」
「んー? 一応俺は見たことあるがよ」
 何の気無しに返事をするジローラモ。
「こういう街中でのんびり見るにはいいもんだよなぁ。実は、雪の朝の空気ってのは結構好きなんだぜ? なんかこう、ひんやりした水ちゅーか、氷の匂いちゅーかが独特でよ。腹ん中まで洗われるみてぇな気がしねぇかい?」
 彼はアスワドのほうを振り返ってから、冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。そうすると、照れくさそうにアスワドが告白した。
「俺、初めてなんですよね。だからですかねぇ……なんだか、物凄くわくわくしてしまって」
 ジローラモは太い笑みを浮かべた。吐き出す吐息も、紫煙と見紛うほどに白い。
「ちゅーか、わくわく、ってよ……」
 そのまま、クスクスと子供っぽい笑みを浮かべながら笑い始める。
「って、ちょっと、何でそこで笑うんです?」
「いや、なんか今、お前の顔がすげぇちっせぇ子供に見えてよ? 俺もガキの頃はわくわくしたもんだぜ?」
 アスワドの反論に、愉快そうに笑って答えるジローラモ。
「子供みたいって……まったく、もう」
 アスワドが軽く嘆息する。聞いて呆れるよ全く、という顔で。
「そういうあんただって、普段は結構なガキ大将じゃないですか」
「って、ガキ大将ってお前……」
 アスワドの反撃に、ジローラモは言葉に詰まる。
「ふふ、ほら、早く帰りましょう? これ以上外に居たら、凍えてしまいそうです」
 その隙を見て、笑みを浮かべたアスワドはさっさと先に歩いて行ってしまう。
「こら、話逸らすんじゃねぇ!」
「ああ、はいはい」
 ジローラモの反論は笑って聞き流しながら、アスワドは家路を急ぐ。
「ったく、この野郎は」
 ぶつぶつ愚痴を零しながらも、すぐに表情を笑みに変えて後を追いかけた。
 今日はリヴァイアサン大祭の日。夜には、二人で祭に行く事になっている。今日がパートナーと共に祈りを捧げる日だとしても、それは二人にとってそう躍起になる出来事ではない。それらしいことはしなくても、二人の心は深い絆で繋がっているのだから。何も無くても、二人はパートナーなのだから。
イラストレーター名:高村かい