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ふたりのリヴァイアサン大祭

月灯願倖・セツカ
深碧の檻・ミシェール

■リヴァイアサン大祭『petits bonheurs』

 大祭の喧騒を忘れた静かな夜の青と、ひらひらと舞う雪の白が、セツカとミシェールを優しく包み込む。2人だけの為に用意されたような場所と、時間。
「今日はとても楽しかった」
 祭りをすごく楽しみにしていたセツカ。今日がどれほど楽しかったのかを一生懸命話している。おっとりとした彼女の珍しく多弁な姿を、ミシェールは穏やかな眼差しで見つめていた。
「それに……」
 セツカは続ける。思うがままに言葉を紡いでいて気付いてしまった気持ち。これまで気付かなかった、だけど確実に育まれていた本当の気持ち。
「ミシェル君と居ると、なんだか安心するの」
 会話の流れに任せて告げて、一泊の間が開いた。
「まぁ……私ったら何を言っているのかしら……」
 はっと我に返ったセツカは、驚いた表情で呟いた。
「ご迷惑だったらごめんなさい……」
 言葉の意味に気付いたセツカは恥ずかしそうに俯いてしまう。そんな彼女にミシェールは、
「僕もセツカと居ると、心が落ち着くんだ……」
 と、気持ちを告げる。思い掛けない言葉に照れて慌てるセツカを見てくすりと笑うミシェール。
「全然迷惑なんて思ってないから謝らないでくれ。それに……」
 わたわたしている彼女がとても愛おしい。
 だから。
「僕は君の事が好きだから、そう想われているのは嬉しい」
 思わず告白めいた言葉を口にしてしまう。きょとんとしたセツカを見て、何を言ってしまったのか気付いたミシェールは慌てて目を逸らし、
「好きというのは、好意を抱いているという意味で」
 普段は冷静で。
「恋愛的な意味で君が好きという意味……で……」
 しっかりしているミシェール。
「あぁ、僕は何を言っているんだ……!」
 そんな彼が滑稽なくらい慌てていて。言い訳になっていない言い訳で本心を露にしている。
「さっきの言葉は忘れてくれ」
 そんな自分に少しいらいらしたのか、自棄になったように言って、
「その方が良い」
 少し寂しそうに呟いたミシェール。そんな彼が愛おしい。
 セツカは真っ赤な顔で俯いたまま、ミシェールの言葉を噛み締めていた。とても照れてしまうけど、それ以上に嬉しい言葉と気持ち。徐々に鼓動は落ち着き、変わって暖かい気持ちが心に広がっていった。
「忘れるだなんて……そんな事できないわ……」
 俯いたまま、小声で言葉を紡ぎだす。
「伝えてくれてありがとう……」
 今なら。自分の気持ちに気付いた今なら、伝える事ができる。
「私も……ミシェル君の事好きだと思うの……」
 真っ直ぐに伝えられた気持ちにミシェールは暫し言葉を失うが、その表情は次第に微笑みに変わっていく。今は顔を上げ、彼を見つめていたセツカも、照れつつふわりと満面の笑みを浮かべていた。
 対照的なようで似ている2人の、不器用ながらも想いの篭った告白。確かめ合って成就した恋。始まった愛。
 そんな2人を、青に染められた世界の中で白が淡く輝き優しく包んでいる。
 まるで祝福するかのように。
イラストレーター名:遊佐