ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

赤髪の運び屋・シヴィル
橙黄音色・リチェリー

■リヴァイアサン大祭『白銀色アッチェレランド』

 白銀の世界を包み込む蒼穹の空の下、ソリ遊びを仲良く楽しむ一組の男女がいた。
 一つのソリに、シヴィルは後ろでリチェリーは前で二人乗り。彼が包み込むように彼女の体をしっかりと支えている。
 雪景色の中で赤茶と黄緑の髪を靡かせて、二人で過ごす時間を満喫中だ。
 リチェリーはソリを運転しながら、色々な感激に思わず声を上げる。
「わ、冬景色が一望出来るね! スピードにどきどきするけど楽しい!」
「あはは、無理すんなよー? けどホントいい景色だよな!」
 シヴィルがやんちゃな少年のように笑ってみせた。
 周りにはソリに乗って滑るシヴィルとリチェリーしかいない。本当に、二人だけの時間である。
 進路外の離れた場所に人を発見し、リチェリーはふと真後ろのシヴィルに振り返った。
「シヴィル君、見て見て。あっちの平原に人が沢山!」
「おーっ、ホントだ」
 返事の直後に、シヴィルは何気なくリチェリーを見た。僅かに赤い彼女の頬が目に映る。
「皆、大祭を満喫してるんだね……」
「あっちじゃ何してんだろうな……ん?」
 シヴィルが意味深な間に不思議そうな顔をした。
 赤かった頬をさらに紅潮させて、リチェリーは満面の笑みを浮かべる。
「えへへ、あたしもシヴィル君と一緒に満喫出来て嬉しいや!」
「……お、おう、俺もリチェと一緒に来れて良かったぜ」
 不意の嬉しい一言に何だか照れたシヴィルが、リチェリーを支える腕に力を込めた。彼女に対する想いを示すように優しくである。
「よ、よーしもうちょい飛ばすぞ! しっかり掴まってろよ!」
 照れるあまりに手綱の端を掴み、緩んでいたスピードを上げた。それが、ちょっとした不運を招く事になる。
 はしゃぎ過ぎた二十五歳の青年シヴィル。
 ソリがバランスを崩して操縦不能となったのだ。
「……リチェ、一旦降りるんだ!」
 スピードが乗る前にリチェリーを上手く降ろすも、シヴィルが乗ったままだった。
「シヴィル君は……?」
 リチェリーに見送られたシヴィルは、小さく積み重なった雪の山に突っ込んだ。軽い事故で済み、すぐに衝突時落ちてきた雪の塊から這い出ていく。
「いてて、これじゃリチェのが上手じゃねぇか……」
「えへへ、形勢逆転……なんてね!」
 リチェリーは軽い冗談と共に、シヴィルへ手を伸ばしていた。
「大丈夫?」
「ちぇ、先生役がこれじゃしまらねえよなー?」
 シヴィルが雪を払って苦笑する。
 二人は手を取り合った。寒空に当たって冷たい手袋越しでも、何故だか温もりを感じる。
「シヴィル君と一緒だったお陰で、緊張はあっても不安は無かったし、楽しく上達出来たと思うんだ」
「……そうか、そうだよな」
 立ち上がったシヴィルが、リチェリーの言葉に強く頷いた。
 リチェリーは火照った顔でシヴィルに本日最高の笑みを向ける。
「大祭の素敵な思い出になったし……今日は本当にありがとう!」
 そうして、二人の時間はもう少し続くのだった。
イラストレーター名:魚子