■リヴァイアサン大祭『Calore』
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもの。気がつけばすっかり日が落ちていた。
まだまだお祭りの熱気がさめやらないまま、おしゃべりを続ける二人。
「んっ……」
「ちょっと、冷えてきたな。風の当たらないところに行こっか」
ふる、と不意に通り過ぎた夜風に小さく体を震わせた少女に、デイが声をかける。
ティアラが頷き、立ち上がった瞬間。
「あ」
ポケットから、手袋がこぼれ落ちる。
「っと――っ!?」
「――あ痛っ!?」
あわてて拾おうと身をかがめるティアラだったが、同時に手を伸ばしたデイと激しく額をぶつけあってしまう。
「「いたた……」」
「「……?」」
目の前に星が見えそうな衝撃に声が漏れるが、同じ言葉が相手の唇から聞こえ、思わず見合ってしまう。
「「――ふふっ」」
なんとなくおかしくなってしまい、二人して照れ笑い。
「ありがとう」
「どういたしましてー」
拾ってくれた少年にお礼を言って、ティアラは手渡された手袋を――。
「えっ? こ、これ――?」
「びっくりした?」
目を丸くするティアラに、デイがいたずらっぽく笑う。
少年から渡されたのは、白いファー付きの、ピンクのふわふわ手袋。
真新しいそれは、デイからの今夜のプレゼント。
「……うん、だって……」
「?」
ティアラがデイに、ラッピングされた可愛らしい袋を手渡す。
少年が包みを開くと、そこにも新品の手袋が。
おんなじだね、微笑むティアラに、デイも笑みを浮かべる。
お互いに同じことを思っているのが、とても嬉しくて。
「ふふ、あったかいや。ほら」
少年が、手袋を着けた手を少女の頬へあてる。
びっくりして真っ赤になるティアラに、思わずデイも照れてしまう。
「…………うん、私も、あったかいよ〜」
せいいっぱいの勇気を振り絞り、ティアラも少年の頬へと両手を伸ばす。
雪の降り続ける冬の夜はとても寒かったけれど。
両手と頬はとてもあたたかい。
こんなふうに、いつまでも一緒で、笑いあえたらとても素敵だと。
二人は同じように『明日』を願うのだった。