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ふたりのリヴァイアサン大祭

スタイリッシュアルトリスト・エイヴァンス
紺碧の謳・アルシェ

■リヴァイアサン大祭『「ただいま」と「おかえり」』

 街は雪が降り続いていた。
 広場の噴水が見える位置で、エイヴァンスは街灯に背を預けじっと待ち続けていた。
 青年の前を、数多くのエルフ達が通り過ぎていく。
 パートナーと共に歩く彼らの表情は一様に晴れやかで、年に一度のこのリヴァイアサン大祭を心から喜び、祝っているようだ。
 もちろん、この日が喜ばしい一日であることはエイヴァンスにも変わりない。
 だというのに、彼の雰囲気が不安と焦燥で一杯になっているように見えるのは――。
「っ!!」
 鋭くなっていたエイヴァンスの目つき、その視線の端に、待ち望んでいた相手の姿が映る。
 息を切らせ、必死に走り近づいてくる、なによりも愛しい少女の姿が。
「アルシェ!」
 認識した瞬間、エイヴァンスは相手の名前を叫びつつ走り出していた。
「エイヴァンス!」
 互いを呼び合う声が絡み合う。
 二人の距離が手を伸ばせば触れられるほどに縮まった瞬間、エイヴァンスが跳びつくように大きく踏み出して、少女の体を抱きしめる。
 満面の笑みを浮かべる青年に対しアルシェは、おそらくこうなるだろうと予想はしていたのだろうが――慣れない行為に、顔を真っ赤にして身を縮こませる。
「あ、あの……」
 消え入りそうな少女の声は、喜びで一杯になったエイヴァンスの耳には届かなかったらしく、青年は最愛の少女を力いっぱい抱きしめ続ける。
 どれくらい経ったのか。エイヴァンスにとっては一瞬、アルシェにとっては気恥ずかしさから何時間にも感じていただろう。
 ようやくエイヴァンスが力を緩めたことで、アルシェの方もゆっくりと落ち着きを取り戻していく。
「……」
 言葉はなく、ただお互いを、長い間離れていた恋人を見つめ続ける。
「…………」
 アルシェは、穏やかな笑みを浮かべているエイヴァンスに向かい、幾度かの深呼吸を重ねる。
 未だ頬に赤みを残した顔ではにかみつつ、まっすぐに青年の顔を、その宝石のように赤い瞳を見つめて唇を開く。

「ただいま」
「おかえり」
イラストレーター名:つかPON