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ふたりのリヴァイアサン大祭

桜花ひとひら・スズカ
銀の十字架・ルーファス

■リヴァイアサン大祭『雪降る夜に。』

 水の星霊リヴァイアサンが空を舞う時、この地に雪が降り積もる。
 エルフ達がパートナーとの絆を確かめ合う今日、森へ続く散歩道を歩く一組の男女の姿があった。
 既に日が暮れていたが、降り続く雪の白さで周囲は明るく、視界に困ることはない。前方に見える森の木々、その枝の一本一本までが白銀に彩られている。
 隣を歩くルーファスと話をしていたスズカは、目の前の幻想的な風景に思わず足を止めた。そんなスズカに、ルーファスは微かに表情を綻ばせる。
「少し休もう」
 ルーファスが示した先には、雪で作られた純白のベンチ。促されるまま、スズカは彼の隣へと腰を下ろした。距離が近いことを意識して、緊張が体を強張らせてしまう。触れ合った肩が、わずかに震えた。
「ちょっと寒いか? ならこれを……」
 ルーファスが自分のマフラーをほどき、両腕で彼女の首にゆるりと巻きつけ、余った方を自分の首へと巻き直す。雪と同じ色のマフラーは、スズカが彼のために編んだものだ。
「わ、私は大丈……!」
 慌てたスズカが言い終えるより早く、ルーファスは彼女を抱き寄せていた。
「……はぅ」
 頬を染めて口篭るスズカ。鼓動が高鳴り、身動きひとつ出来ない。
「外が寒い分、鈴の体温があったかく感じられるなー」
 そう言ってスズカを抱く腕にそっと力を込めるルーファスに、彼女は「あったかい、です」と返すのが精一杯で。相変わらず固まりっぱなしのスズカを見て、ルーファスは彼女の背に腕を回したまま、懐から小さな水筒とチョコレートの箱を取り出した。
「あっ……」
 自他ともに認める甘党のスズカが、一瞬、緊張も忘れて目を輝かせる。その隙に、ルーファスはチョコレートの欠片と水筒の中身を口に含むと、自分の唇をスズカの唇へと重ねた。口移しで流れていく甘い蜜の味、チョコレートの香り、そしてルーファスの熱――みるみるうちに、スズカの頬が赤く染まる。
 長い口付けの後、ようやく唇を離したルーファスがスズカの顔を覗き込んだ。
「あったかく、なった?」
 耳まで真っ赤なスズカとは対照的に、さも当然のような態度で彼女に問う。
「も、もう……十分にあったまりました」
 頬の熱が冷めないまま、小声で答えるスズカ。恥じらいながらも幸せそうな少女の顔を、ルーファスの他に見たのは空から舞い落ちる雪だけだった。
イラストレーター名:耶麻たすく