■リヴァイアサン大祭『あえて、そんな悪戯を。』
窓の外では恋人達が手をつなぎながら、あるいは腕を組みながら寄り添って歩き、楽しそうに喋りながら歩いているのが見える。「お互い一人身かー」
ふいに、ラピリスは漏らした。
その言葉につられて、ガウェインは苦笑してしまう。
折角の大祭ではあったが、それにふさわしきパートナー……恋人はいない。
そのことを残念に思う気持ちがないと言えば嘘になるが、寂しくはない。
友人同士、楽しく過ごすのもまた一つの手だ。
ガウェインとラピリスはケーキなど食べつつ、軽いパーティー中だった。
ケーキをパクリとついばみ、ガウェインは座っているラピリスをなんとなく観察した。
赤茶の髪に、中性的な顔立ち……細身の体。
(「女装したラピリスはは可愛いが……男だしなあ」)
そんなことを思いながら、ふと思い立った。
悪戯心がうずき、口元だけに笑みを刻む。
今まで雑談していたガウェインが急に黙ったことを不思議に思ったのか、ラピリスは顔を上げた。
ガウェインは立ち上がる。今までの能天気で明るい雰囲気からクールな雰囲気に変わっていた。
「……え?」
雰囲気の変化にラピリスはパチクリとする。そんなラピリスの目を真っ直ぐに見据え、ガウェインは涼やかに微笑んだ。
「俺はお前と過ごせて嬉しいぜ?」
言いながら、ガウェインは指先をそっとラピリスに伸ばす。
口説くようなその言葉に、ラピリスの顔が上気した。思わず照れてしまったラピリスは視線を落とす。
俯いたラピリスの脳天にトン、とガウェインの指先が触れた。
「……なんてナ?」
その言葉にラピリスは顔を上げる。
目が合うと、元の能天気な雰囲気に戻ったガウェインはにっと笑った。
「…………」
ガウェインの豹変ぶりにラピリスは言葉を失う。
「――びっくりさせるなよ!」
そのギャップに思わず突っ込みをかました。
「あっはっは! 見事引っかかったな〜」
「ひでぇ!」
冗談を飛ばしつつ、笑いも響きつつ、友人同士楽しく夜は更けていく。
こんな夜も、悪くはない。