■リヴァイアサン大祭『ひげの人を探すです!』『間違えちゃ、だめだよ』
「きいてくださいですよ、エル!」フード付ケープに付いたウサ耳をピコピコさせ、リズことリーゼロッテは、エミールの前でピョンピョンとびはねます。
「なぁに、リズ」
エミールことエルが、不思議そうにリズをみつめました。
「リヴァイアサン大祭は、プレゼントがもらえるんですって!」
良い子は無条件でプレゼントがもらえると、リズは聞いたのです。けど、エルは信じられない様子。
リズは、説明を続けます。何でも『白いひげで、小太りで、返り血をあびたような真っ赤な服を着てるおじさんが、プレゼントをくれる』そうです。
そして、子どもを見るとニタリと笑い「めぇりぃーくりすまぁすー」と言うとか。
(「なにそれ、こわい」)
こわくなったエルですが、リズは大はりきり。
「そんなわけで、出発ですよっ」
「え? しゅっぱつ?」
「はいっ! プレゼントくれるひとをさがしに、ですよっ!」
お家を大慌てで飛び出した二人。
「ちょ、ちょっと、待ってー」
と、エルが声を出しますが、リズはいつもの強引さで、エルを引っ張っていきます。
けれど、街中で。
「くしゅん」と、リズはくしゃみをしました。
雪が降っていました。そして、リズは気づきました。
「……てぶくろ、わすれてきちゃった」
そんなリズに、エルは何かをさしだしました。
「……片っぽだけ、ど、ボクの貸して、あげる」
「……うん! ありがとです、エル!」
エルの手袋の方っぽをはめるリズ。うれしくてにっこりするリズに、エルもまたにっこりするのでした。
「あ! みてみて! あれっ! 大きな木にかざりがいっぱいですっ」
街中を行くと、にぎやかな様子にリズは大はしゃぎ。
「あ、あぶない、よ」
そんなリズを見て、エルはハラハラ。
「んっ? ……いいにおいです!」
甘い香りが、リズの鼻に届いてきました。
お菓子屋さんです。きれいなお菓子がいっぱい、お店に並んでいました。
「おいしそー……リズは、あのイチゴの食べてみたいですっ」
「ほくは、チョコのを……」
そのうちエルも、楽しそうな顔を浮かべるのでした。
玩具屋さんの前で、リズとエルは立ち止まりました。
「みてみてっ、あれかわいいですっ!」
「あ、本当、だ」
真っ白ふわふわな子羊のぬいぐるみが、青い子馬のぬいぐるみと一緒に、店先に飾られています。
「なんだか、リズとエルみたいですねっ」
「うん、そうだ、ね」
エルの言葉を聞き、リズはまたにっこり。
「……楽しいですね、エル!」
「うん。楽しい、ね。リズ」
ひげの人は見つからなかったけど、リズはとっても楽しい気分。大好きなエルと一緒に、かわいいものやきれいなものを、いっぱい見れたのですから。
「また遊ぼうね、エル!」
「うん。ぼく、も、また、遊びたい、よ。リズ」
手袋をしてない方の手で、リズはエルの手をとりました。冷えた手が、暖かくなってきます。
おうちに帰る二人を、玩具屋さんのお人形たちが優しく見守るのでした。