■リヴァイアサン大祭『Let's go together!』
今日は雪が降っていた。空気は冷たいけれど、皆の心はあったかい。そう、今日はリヴァイアサン大祭なのだから!「〜♪」
今日のステラはご機嫌だった。お買い物に来ることができたというのもある。けれど、隣を歩くクロトが頑張って誘ってくれた、というのも喜びを倍増させていた。女性が苦手なクロトだが、一大決心してステラを祭りに誘ったのである。女性が苦手なのを治したいクロトの手伝いをするために、ステラはぐっと気合を入れてきた。一方のクロトも、誘った側の意地として、しっかりエスコートできるようにと考えて……はいたが、やっぱり不安だった。
「あ、ステラさん、こっち」
「ん、なになに?」
買い物の途中、荷物を持ったクロトが彼女を手招きして指差した先には、大道芸をしている芸人が、ボールを使った芸を見せていた。
「おおー、すごいねすごいねー!」
クロトも、曲芸に見入るステラを見てほっと一息。少しでも多く、彼女に楽しんでほしいから。それでもまだ、彼女との距離を縮められていないのは悔しい。やっぱり少し距離を取ってしまうのはなんとかならないものか……と思っていたところで、芸人が一礼して一旦間が空く。はふぅ、と感嘆のため息をついて、ステラがきょろきょろと頭を巡らせた。
「うーん……あ。またあっちで何かやるみたいだよ! クロト君一緒に行こう!」
何か見つけたらしいステラが、ひょいとクロトの手を取った。彼が一瞬で真っ赤になった事に気づかず、小柄な体で力いっぱい人並みをかき分けていく。
「ス、ステラさん、ストップ、ストップ! ちょっと待って、手っ!?」
しかし、いきなり手を握られたクロトは大混乱中だった。なにせ心の準備もなしに女性と手を繋ぐなんて、そんなっ! 途中で声に気づいたステラは、くるっと振り返って悪戯っぽく笑った。
「あ、忘れてた、ごめんね〜。でもほら、このほうがあったかいでしょ?」
クロトからしてみれば、ほんの少し、彼女が小悪魔にも見えた瞬間だった。でも、彼女も楽しんでくれているみたいだからいいかな、と思う。緊張はするし、なんだかむずがゆいけれど、この手を離すのはなんだか、名残惜しかった。ステラからしても、これで女性が苦手なのを少しずつ克服してもらえればと思っての事でもある。
そしてそのまま、劇や出店、合唱団のコンサートなどを二人で一緒に見て回る。少し距離は離れたり、近づいたり。まだ少し、苦手意識の解消は難しいのかもしれないけれど、それでも大きな一歩は踏み出した……かもしれない。
「クロト君、誘ってくれてありがとね」
不意に、クロトを見上げながらステラが礼を告げる。またも不意を撃たれた形になったクロトだが、今度はしっかりと言葉を返せた。
「俺も、楽しかったです」
これだけの言葉を言うだけでも、心臓のどきどきが止まらなかった。
けれど、まだ祭りの時間は少しある。もう少しだけ、彼らの時間は続くのだ。