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ふたりのリヴァイアサン大祭

宝翼の騎士・ラクスウェル
風鋼の将・シグナム

■リヴァイアサン大祭『雪降りし夜の誓』

 広いダンスホールで、ラクスウェルとシグナムはダンスを踊っていた。手を取り合い、寄り添う。近づいては離れ、また近づく二人の体。シグナムの手に導かれ、ラクスウェルがくるりと回る。滑らかで一分の無駄もない、優雅な動きだ。
 音楽が途切れ、ラクスウェルはふと窓の外を見た。暗い空にちらちらと白いものが舞っている。ラクスウェルは目を輝かせた。
「シグナムちゃん、雪ですなの〜♪」
「あぁ、そうだな」
 つられて外に目をやり、シグナムは微笑んだ。
「お外に行くですなの〜」
 言うが早いか、ラクスウェルの足はテラスへと向かっていた。シグナムはゆっくりとその後を追う。
 テラスに出ると、冷たい夜気が肌を刺した。白い雪片が舞い降りる中、ラクスウェルは両手を広げてくるくると回る。まるでダンスの続きをするかのように。
「冷たいですなの〜♪」
 ラクスウェルははしゃいだ声を上げた。足を止め、空に向かって手を伸ばす。手のひらに触れれば溶けてしまう、小さな雪の欠片。シグナムが見守る中、ラクスウェルはしばらく空を見上げたまま、両手で雪を受けていた。
 風が吹き、ラクスウェルは一つくしゃみをした。
「少し寒くなってきましたなの……」
 ぶるりと身を震わせ、シグナムの傍に来て寄り添う。シグナムはくすりと笑い、その体を抱き寄せた。ぴたりと肌を合わせると、相手の温もりが直に伝わってくる。
「シグナムちゃん、温かいですなの〜」
「ラクスも温かいな」
 互いの口から漏れる呼気は白い。ラクスウェルはシグナムを見上げ、はにかんだように笑った。シグナムの顔が近づいてくる。
「……ラクス」
 優しい呼びかけに、ラクスウェルは目を閉じる。
「……シグナムちゃん」
 名前を呼び合い、ごく自然に唇が重なった。頭に肩に、次々と舞い降りては溶ける雪の冷たさも忘れるほど、温かい。
 ……どのくらいそうしていただろうか。
 唇が離れると、シグナムは頬に笑みを浮かべ、ラクスウェルの体を抱く腕にぎゅっと力を入れた。
「ラクス、私の側に永遠にいて欲しい」
 囁かれたのは、遠い未来へと続く約束の言葉。ラクスウェルは驚いたように目を瞠り、それから小さく頷いた。
「……私はずっといますなの〜」
 シグナムだけに聞こえる大きさで、ラクスウェルは誓いの言葉を呟いた。
イラストレーター名:桐嶋たすく