■リヴァイアサン大祭『聖夜の魔法。凛々しい貴方を可愛くコーディネート』
年に1度だけのリヴァイアサン大祭。窓の外から幾多の色の光りが煌き、この日を楽しむ賑やかな声が聞こえてくる。
リィナとラテリコスの2人は舞踏会の支度の真っ最中。もうすぐ始まる雪上舞踏会を楽しむため、クローゼットからそれぞれ自分の服を取り出す。
(「やっぱりこれかな」)
リィナは黒いタキシードを取り出し、エルフヘイムダンスパーティでラテリコスと踊った時の事を思い出していた。
あの時の音楽が耳元に残っているような気がする。
「あ!」
突然リィナの後ろから大きな声。
その声に驚いて振り返れば、フリルが沢山付いた水色ドレスのラテリコスの姿があった。銀色に光る長い髪を下ろし、舞踏会への準備は万端といったところだろう。
「今日は特別な日なんだから、女の子らしくした方がいいわ」
ラテリコスはリィナの顔を覗き込むようにして注意をする。
「わ、私はいつもの男物でいいよー!?」
慌ててタキシードを抱えようとするが、相手の方が一歩上手。ラテリコスは素早くタキシードを取り上げると、真っ白なドレスをリィナに充てがう。
普段着ることのないフリルのドレス。
甲冑の冷たさも硬さも感じない。
不思議な感じに戸惑いつつ、ラテリコスに言われるがまま袖を通す。
「や、やっぱり、私にはこんな可愛い服似合わないよー……」
リィナが何と言おうが、ラテリコスはお構いなしでドレスのフリルを整えていく。スカートが終われば、次は髪。慣れた手つきで艶やかな漆黒の髪を丁寧に梳かし、小さな花の飾りを付ける。
「うん、なかなか似合ってるわね。予想通りといったところかしら」
リィナの正面に立ち、満足気に全体を確認する。そして、部屋の隅にある大きな鏡を指差す。
そこに映る自分の姿が、リィナには少しだけ恥かしく思えた。
騎士として、真面目に役割を果たしてきた自分とは違う、別人のようなもう一人の自分。そして、横に映るのは自分を理解してくれる大切な親友。
「さ、行きましょう。舞踏会が始まるわ」
ラテリコスがリィナの背中を押す。
「う、うん……ありがとう……」
俯き呟いたリィナの小さな声はラテリコスに届いただろうか。
2人の舞踏会の時間はもうすぐ。