■リヴァイアサン大祭『白の世界 包む黒 優しくて綺麗な、二人色』
「雪を見に行きましょう」雪路の散策は、クニークルスから誘った。
伺う形ではなく、連れ出す気満々のやや強引な誘いに、ゼルガは二つ返事で了承した。
断る理由は何もない。
今日は、大切なパートナーと絆を確かめ合う日――リヴァイアサン大祭だから。
朝から降り続いた雪は、冬の森を真白に染める。
はらはらと雪の降る中だけれど、傘は持たない。
森の小道を揺れる灯りは一つだけ。
そのことに特にお互い疑問は持たず、クニークルスとゼルガの二人の間には、納得した相通じる空気があった。
夜の暗い森の中、雪の小径には、二人きり。
刻まれる足跡も二人分。
足元の雪をそっと踏みしめて、時々足跡を振り返ったり、降り続く雪を見上げたり……と、落ち着きのないクニークルスを、ゼルガは微笑ましげに眺める。
「なんだか……普段より楽しそうに、見えるな」
笑いを含んだゼルガの呟きに、クニークルスは夜と同じ色のコートをふわりと翻し、振り返る。
「だって、貴方の色が一杯で、世界が輝いているんだもの。見ておかなければ勿体無いわ」
満面の笑みと共に返されたクニークルスの言葉に、ゼルガは瞳を瞬かせた。
降り積もる雪白――『白』はゼルガの象徴色。
クニークルスは、視界を満たす雪の白さに幸せ一杯だった。
彼女を満たす幸せの源を聞き、ゼルガは照れたように微笑んだ。
ふと周囲を仰ぎ見て、今度は逆にクニークルスの象徴色である黒を探す。
ゼルガの視線の意図に気づき、クニークルスの顔により深い笑みが浮かぶ。嬉しそうにゼルガを見つめ、瞳をゆるめ微笑むと、二人で握っていた灯りをそっと消した。
一瞬で、森の中は静寂と夜闇に包まれる。
「クニス……?」
「ほら、真っ暗。闇色では、私の色にならないかしら?」
くすくすと笑う彼女の声を聞けば、きっと悪戯な笑みを浮かべているのが見える気がした。
夜色の空間に、空から降り続ける雪白が仄かに輝く小径。
お互いの姿も、はっきりと見ることはできないけれど、二人の間には繋いだ手がある。
そうでなくても、いつでも傍らにいることは判りきっている。
クニークルスとゼルガは、暗闇の中を、先ほどよりもゆっくりと、歩きだした。
二人きりの大切な時間を愛しむように。