■リヴァイアサン大祭『二人っきりのリヴァイアサン』
「お兄ちゃんと二人きりのパーティー……頑張らないとですねっ!」年に一度のお祭りに心躍らせているのか、義妹であるリィナの意気込みはすさまじい。
「一緒に美味しく作れるといいね」
調理のプロであるライだが、せっかくの二人でのパーティなのだから料理を作るところから楽しもうと二人で台所に立つことにした。
葉野菜に大根の細切りの上にささみを割いて乗せ、特性のドレッシングをかけたサラダ。
ケーキは定番のブッシュ・ド・ノエル。
オーブンの中では、メインであるローストビーフがじっくりと焼かれている。
「それじゃあ、次は上にかけるブラウングレイビーを作っておこうか」
「はいですっ。……あの」
「なんだい?」
「こうやって、二人でお料理作るのってとっても楽しいですねっ!」
「リィナちゃんは本当に料理が好きなんだね」
「あ――えっと……、はい」
そういうことじゃないんだと言いたげな表情を浮かべるリィナだったが、面と向かって言葉にするだけの度胸はなく、しぶしぶうなずいてしまう。
「さっ、これで完成だ。運ぶの手伝ってくれるかな?」
「はいですっ、ライお兄ちゃん!」
それでも、大好きな義兄に声をかけられただけで、顔を覗き込まれただけで嬉しくなって顔を赤くしてしまう少女なのだった。
長テーブルにそれぞれ料理を並べていく。
焼きたてのパンにスープ、サラダ、ケーキ……。
ローストビーフにはソースをかけて、薬味としてホースラディッシュ、クレソンを添えて。
席は、リィナの希望で二人横に並ぶかたち。
「それじゃ、乾杯かな?」
お互いのグラスにとっておきの葡萄ジュースを注ぎ、ゆっくりと持ち上げる。
「乾杯ですっ! ……ライお兄ちゃん、メリーリヴァイアサン、です」
二人で仲良く作った料理を、二人で食べる。
外は雪が降り続いていても、部屋の中は大きな暖炉のおかげでとてもあたたかい。
ロウソクと暖炉の柔らかなあかりが二人の世界をあかく彩る。
(「こうしていると、とっても幸せで、だから――」)
少しだけ勇気を出して、少女は体を大好きな義兄に重ねる。
「リィナちゃん?」
ライがもたれかかって来たリィナに声をかけるが、返事はない。
「…………」
けれど、瞳を閉じた少女の顔がほんのり赤く染まっているのを見た少年は、それ以上何かを言うことなく義妹の体をそっと支える。
寒い寒い冬の中、二人だけのあたたかい夜はゆっくりと更けていくのだった。