■リヴァイアサン大祭『かけがえの無い君の温もり』
大きなキャンドルに、窓に飾られた小さな流れ星の飾り物。リヴァイアサン大祭で、美しくいろどられた街を二人は並んで歩いていた。雪が降り始めた事もあって、いつもの街がとても華やかに見える。「寒ない? 俺のマフラー使う?」
かわいいけれど、襟元が開いて少し寒そうなエリザベスの格好に、ラトラーシュが声をかけた。
その言葉に、エリザベスはイタズラっぽい笑みを浮かべて、形のいい唇をラトラーシュの耳に近付ける。
「マフラーより、肌が触れ合ったほうがあったかいかも」
「ええええ!」
突然の爆弾発言に、ラトラーシュの顔がパッと赤くなった。
(「肌が触れ合うって、それって、やっぱり、想像通りの事やろか!」)
ラトラーシュの頭に、エリザベスのイケナイ姿が浮かんできてしまう。
「い、いや、でも、ベス、俺ら、まだそんな……」
ラトラーシュは、熱くなった顔をあおいだり、視線をそらせたりして、すっかりおろおろしてしまった。
(「可愛いなぁ」)
そんな彼の姿を見て、エリザベスはついそんな事を考えてしまう。にやにやしながら続ける。
「ボクとじゃ、イヤ?」
ちょっと意味ありげに彼の顔をのぞき込むと、ラトラーシュはますます赤くなった。
「べべべ、別にそういうわけやなくて……」
「ボクと手を繋ぐの、そんなに恥ずかしい?」
くすっと笑って、エリザベスはラトラーシュの手を握った。
「へ?」
ぽかんと口を開けたまま、ラトラーシュはしばらくエリザベスを見つめた。
そういえば、二人とも手袋をしていない。
どうやら、彼女の言う肌が触れ合う、というのは手を繋ぐ事だったようで。
(「なんや、そういう事だったんやな……」)
勝手に誤解していたのを少し恥ずかしく思いながら、ラトラーシュはエリザベスの手を愛しげにぎゅっと握り返した。
手の平から直接お互いのぬくもりが伝わってくる。何よりも大切な人の、命の証。どうか、このぬくもりがいつまでも傍にありますように。
触れ合った肌は、確かに暖かかった。