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ふたりのリヴァイアサン大祭

エリスの林檎・ディザイア
謳えや桜・スリーゼ

■リヴァイアサン大祭『おらこんなんもう嫌だっぺ!』『それはこっちの台詞だ』

 ……ええと、わたし、さっき般若の様な顔をした女にひっ掴まって。今に、至る。
 どこか遠い目をしながら、ディザイアはどぼどぼとスリーゼのグラスにエールを注いだ。
 スリーゼ曰く、
「心優しいおらは一人でさぞ寂しい思いをしているであろうディザを誘って飲みに来ただよ!」
 ということだが、愚痴を聞かされるために連れてこられたとしか思えない。ちらと隣のスリーゼを見る。スリーゼはくだを巻きつづけていた。

「実はおら、密かにこの日を楽しみにしていただ。何時もより早く起きて、化粧とかも普段より念入りにしちゃったりお金も多目にお財布にいれてみたりして。もし誰かからお誘いされちゃったらどーしよー☆ とか……それなのに! ご覧の有様だよ!」
 そこまで一息にいうと、ああもうちくしょー! と一気にグラスを煽る。
「どうしてこんな清楚で可憐な乙女に声が掛からないっぺか! おらの何がいけないんだ! 胸か! やっぱり男は胸なのか!」
 口角泡を飛ばしながらディザイアに訴えるスリーゼ。その顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。
「ちょっと、こっち向いて喋るのやめてよ。唾とか涙とか、色々飛んで来る、から」
 少し顔をしかめながらいうディザイアだが、まったく聞いていない。
「おっちゃん! もう一杯だっぺ! ああん? 飲み過ぎィ? そんなのどうでもいいだよ!」
 喚きながら空になったグラスを掲げるスリーゼ。やれやれ、と肩をすくめながら、ディザイアも空のグラスを差し出す。
「あ、マスターもう一杯。キツめのでお願い。……あぁん? 飲み、過ぎ? 聞こえん、な」
 飲み過ぎはお互いさまの状態で、それでも女二人の宴はまだ続く。

「全くもうリア充なんて男は皆ビンから飛んだコルクが頭に当たって彼女に膝枕で介抱されちまえばいいだ!」
「そうそう、リア充なんて。『息が白いね』『でも全然寒くないわだって貴方が居るもの』とか言って、甘あっまな時間を過せば、いい。のよね。……と綺麗に纏めた所で、いい加減帰っても、良いかしら」
 ねぇ? とスリーゼの方を見る。と、スリーゼは酔いつぶれたのか、テーブルにうつ伏せになっていた。ディザイアがゆすっても起きる気配がない。
「……寝てる」
 ため息をひとつつき、ディザイアは心配そうに見ている店主に向かって
「大丈夫、支払いはスリーゼが、してくれるわ。お金、たんまり、あるんですもの、ねぇ?」
 と、一言。

 この後、目覚めたスリーゼの隣には連れがいなかったという……。
イラストレーター名:fizzbuzz