■リヴァイアサン大祭『聖なる夜のドッキリ成功……?』
今日はリヴァイアサン大祭。そして――。「喜んでくれると良いけど」
手には綺麗にラッピングされた箱を持ったイシュタルが微かに頬を綻ばせる。
「ただいま」
ドアを開けて、
「お帰りなさい」
笑顔で出迎えてくれる愛しい妻――ヴィルの姿に、イシュタルはドアノブを持ったまま硬直した。
(「……え、えっと……」)
こんなに寒い真冬だというのに、黒のケープに紅のビキニ。その上、自身に水着と同じ紅いリボンを巻いたヴィル。
(「特別な日だから、特別な服で出迎えて喜ばせようと思っていたのに……」)
「イ、イシュ……」
本当に小さな、聞えるか聞えないかの本当に小さな声がウィルの唇から漏れた。
イシュタルが硬直してしまった。自分の格好を見て。途端に自分の格好が恥ずかしくなって、頭から煙が出そうなくらい真っ赤になってしまうヴィル。
イシュタルも硬直したまま言葉を紡げない。
「――……ッ!」
沈黙に耐え切れず、赤面した顔を隠す為にイシュタルに抱きつ……こうとして、
――ドサッ!
勢いが付きすぎて、イシュタルを押し倒してしまった。
「大丈夫? 痛くなかった?」
イシュタルは床に仰向けになりながら、自分の身体の痛みよりも先に、愛しい妻が倒れてしまった事で怪我をしてないか心配そうな顔を浮かべる。
(「……可愛い、けども……なんて格好を……。そんな格好をしたヴィルに押し倒されて……」)
などど、イシュタルは内心物凄く動揺していたのだが、その動揺を悟られぬよう微笑み、
「なんでそんな格好……いや、それより、こんな状況でなんだけど、誕生日おめでとう」
赤面しながら、照れた様子でプレゼントを差し出した。そのプレゼントを持つ手は、心なしか震えている気がするが。
ヴィルは、まさかの事態に、どうしていいか分からず思考が停止して、耳まで真っ赤になって硬直してしまった。
「あ、ありがと……」
真っ赤になったままプレゼントを受け取るヴィルだが、そのまま動けない。
「中身……見てくれないの?」
「あ、う、うん……」
イシュタルの声で我に返り、綺麗にラッピングされている包装を丁寧に外す。そして出てきたのは、
「綺麗……」
星が連なったピアスだった。
「つけてあげる」
優しく微笑むイシュタルが、そのピアスをヴィルの耳につけてあげると、
「ありがとう♪」
ヴィルは子供のように喜びぶ。そして、イシュタルを見つめる。
その眼差しをしっかり受け止め、見つめ返すイシュタル。
お互いに少し照れながら重なる唇。
寄り添い、お互いの温もりを感じながら、二人の祝いの日は、静かに流れた。